2016 年 36 巻 4 号 p. 761-765
症例は56歳の女性。潰瘍性大腸炎の治療中に上腸間膜静脈血栓症を発症した。門脈から上腸間膜静脈まで広範な血栓を認めたが腹部症状は軽微であり,当初保存治療を選択し,ヘパリン投与を開始した。しかし,保存加療中も高熱が持続し,CT検査にて限局した回腸末端の浮腫の残存を認めたため,非可逆的な腸管虚血の残存を疑い,診断後8日目に回腸部分切除術を施行した。術直後よりヘパリン投与を再開したが,術後4日目に血小板数の減少をきたした。ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia)が疑われ,同日よりヘパリンの代替薬として抗トロンビン薬(アルガトロバン)の投与を開始した。ヘパリン中止後5日目に血小板数は上昇に転じた。HIT抗体は陽性でHITⅡ型の診断となった。今回上腸間膜静脈血栓症に対する抗凝固薬治療中にHITを発症した1例を経験したので報告する。