2016 年 36 巻 6 号 p. 1033-1036
【背景】Damage Control Surgery の概念が拡がり,術前CTの省略やガーゼパッキングが一般的になった。しかし,医療技術が進歩した現在では一期的な根治的止血(definitive hemostasis:以下,DH)は可能であると考えている。【対象と方法】過去10年間で,循環動態が不安定な外傷性腹腔内出血に対して開腹手術を施行した症例を対象とした。ガーゼパッキングを最後に施行した2012年9月以前を前期群,それ以降を後期群として,両群間で比較した。【結果】前期群94例,後期群35例であり,injury severity score(以下,ISS),損傷臓器,病着から執刀開始までの時間,および手術時間は両群間で有意差はなし。術前CT施行率は全期間で高い水準にあった。院内死亡率は,後期群で有意に減少した。【結論】医療技術が進歩した現在,大量腹腔内出血に対しても,術前CTによる出血源を特定し,DHを指向した治療方針は妥当である。