症例は36歳の女性。前医より肝腫瘍の増大を指摘され,精査目的に当院紹介となった。腹部CT造影検査および腹部超音波検査で,肝S4に約50mm大の腫瘤像を認め,肝細胞腺腫と考えられた。受診直後より連日39℃以上の高熱が持続した。保存的治療を行うも軽快せず,腫瘍もさらに増大傾向を示した。肝表面に露出した病変であり経皮的肝針生検は施行できないため,診断的治療目的で肝部分切除術を施行した。病理学的に肝Inflammatory pseudotumorと診断された。術直後から解熱し,術後経過良好にて第6病日に軽快退院となった。肝Inflammatory pseudotumorは良性腫瘍であるが,特異的画像所見がなく,診断に難渋することが多い。本症例のように,良性腫瘍と考えられるが,針生検が困難で,腫瘍の急激な増大かつ臨床症状を伴う症例では,手術による診断的治療も選択肢の1つとして考慮された。