2017 年 37 巻 4 号 p. 593-597
58歳,女性。右腰部から大腿部の疼痛と便臭を伴う排膿で当院へ紹介された。体温39℃,WBC 19,800/μL,CRP 28.5mg/dLであった。造影CTで右後腎傍腔に8×8cm大の膿瘍と大腿部皮下までの炎症の波及を認め,全身麻酔下に腹膜外アプローチでの緊急ドレナージ術を施行した。術後に大腸内視鏡検査を施行したが異常を認めず,腹部超音波検査で虫垂先端から連続する膿瘍腔を認めたためドレナージ11日目に単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。病理検査で虫垂憩室穿通と診断した。術後経過は良好であった。虫垂憩室穿通による後腹膜膿瘍は報告例が少なくまれと考えられる。治療方法に関して,一期的治療を行うかドレナージ後に二期的治療を行うかは一定の見解が得られていないが,自験例ではドレナージを先行することで腹腔鏡下手術を行い,合併症などなく良好に経過できたため有用な治療戦略と考え報告した。