2018 年 38 巻 1 号 p. 113-116
症例は37歳,女性。腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。血液検査で炎症反応の上昇を認め,腹部造影CT検査で中等量の腹水と,虫垂や左付属器周囲の炎症性変化を認めた。穿孔性虫垂炎または骨盤内炎症性疾患を疑い,全身麻酔下に診断的腹腔鏡を行う方針とした。術中所見では,左卵管留水腫が約720度捻転し,黒色に変色,壊死していた。近接する虫垂にも炎症の波及がみられたため,腹腔鏡下に左卵管切除と虫垂切除を施行した。一般に卵管留水腫茎捻転は比較的まれな疾患で,術前診断が困難である。一方,子宮付属器疾患は鏡視下手術で安全に治療し得ることが多く,また開腹手術と比較し低侵襲で整容性も高い。成人女性の非典型的な急性腹症に対する診断的腹腔鏡は,躊躇せずに施行することでまれな疾患の迅速な診断を可能にし,さらには引き続き低侵襲な治療が実施できる点で有用であることが示唆された。