2018 年 38 巻 1 号 p. 117-121
壊死型虚血性大腸炎の中でも全大腸型の報告は過去にほとんどなく,非常にまれである。症例は高血圧症の既往がある73歳,男性。前日より腹痛,全身倦怠感を認めていた。その後症状の増悪を認め,当院救急搬送となった。来院時,ショック状態であり,著明な代謝性アシドーシスを認めた。腹部CT検査で腹水貯留,門脈ガス像,広範な大腸壁の菲薄化,周囲の脂肪織濃度上昇を認め,広範腸管壊死の術前診断で緊急開腹手術を施行した。手術所見では,回腸末端から200cm口側の回腸から腹膜反転部の上部直腸にかけて,腸管は散在性に壊死しており,さらに下部直腸の粘膜の虚血性変化を認めた。手術としては大腸全摘術,回腸人工肛門造設術を施行した。壊死型虚血性大腸炎および非閉塞性腸管虚血に対する手術としては壊死腸管の切除が原則である。自験例では下部直腸の粘膜にまで壊死が及んでおり,大腸全摘術を行った。文献的考察を加え報告する。