2018 年 38 巻 5 号 p. 857-860
子宮広間膜裂孔ヘルニアはまれな内ヘルニアであり,認知していなければ診断が遅れ,手術のタイミングが遅れる可能性がある。症例は,32歳女性。腹痛・嘔吐のために当院へ搬送された。既往歴として3年前に帝王切開あり。CTでは骨盤左側に軽度浮腫を伴った小腸を認めたが確定診断に至らず,入院経過観察の方針とした。翌日疼痛が増強し,再度CTを施行したところ,左下腹部に浮腫を伴う小腸が一塊となって存在し,子宮左側に腸間膜構造が集中して扇状となっている所見が認められ子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断。絞扼性腸閉塞の状態であったため緊急手術を施行した。手術所見は,左子宮広間膜に異常裂孔が存在し,約50cmの小腸が絞扼されていた。壊死小腸は裂孔に嵌頓し,用手的な還納は困難であったために,壊死小腸を切除し,縫合閉鎖した。本疾患は,認知していなければ術前の確定診断は困難であり,本疾患の認知,特徴的な画像所見の理解が必要である。