日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
審査腹腔鏡が診断に有用であった爪楊枝誤飲による小腸穿孔の1例
松下 公治八岡 利昌岡本 史樹福田 千文多賀谷 信美
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2019 年 39 巻 1 号 p. 133-136

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抄録

異物誤飲によって消化管穿孔を起こすことがある。今回,異物誤飲の自覚がなく,画像検査で異物や腹腔内遊離ガスを認めず,診断に難渋した爪楊枝誤飲による小腸穿孔を経験した。81歳女性が前日より腹痛,嘔吐があり受診した。腹膜刺激症状があり,血液検査は白血球13,700/μL,CRP 13.0mg/dLであった。腹部造影CT検査で腹水を認めたが,異物や腹腔内遊離ガスはなかった。急性汎発性腹膜炎と診断したものの,原因疾患は不明であった。審査腹腔鏡で回腸に穿通した爪楊枝を発見し,爪楊枝誤飲による小腸穿孔と診断し,小腸部分切除術と洗浄ドレナージ術を行った。異物誤飲による消化管穿孔では原因を特定できないこともあり,審査腹腔鏡が診断と治療に有用である。腹部所見では腹膜炎を疑うが,画像上の特徴がない原因不明の症例や緊急手術の適応を迷う症例には,診断と治療を目的に,侵襲の少ない審査腹腔鏡を積極的に考慮すべきである。

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© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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