症例は53歳男性。下痢,嘔吐および左側腹部痛を主訴に当院消化器科受診。腹部単純CT検査で小腸の拡張,腸管内容物貯留,腹水を認め,重症腸炎と診断し,経過観察入院となった。6病日目に単純CT検査の読影レポートが届き,S状結腸間膜ヘルニアが疑われ,外科紹介となった。腹部造影CT検査を施行すると,腸管の虚血は認めないが,腸管は拡張したままだった。しかしながら,壊死を疑わせる症状はなかったので,8病日に試験開腹を行った。腹腔内には拡張した小腸を認め,S状結腸間膜の直径3cm程の裂孔に110cm程の小腸が嵌り込み絞扼していた。裂孔を広げ,小腸を引き出したところ,拡張や色調も正常であったので,小腸切除は行わず,裂孔を閉鎖し手術を終了した。S状結腸間膜裂孔ヘルニアはまれな疾患で,術前診断が困難である。開腹歴や外傷のない絞扼性腸閉塞の症例では,S状結腸間膜裂孔ヘルニアの可能性も念頭に置くことが重要である。