2019 年 39 巻 3 号 p. 601-604
症例は34歳男性。自宅で意識を消失し階段を数段滑り落ちて救急搬送された。来院時ショック状態であり,造影CT検査で腹腔動脈解離と脾動脈近位部の動脈瘤破裂による腹腔内大量出血を認め,大動脈遮断バルン(intra-aortic balloon occlusion:以下,IABO)を挿入し開腹した。IABOによる術中の出血制御が有効であり,脾動脈出血部位の中枢側と末梢測の脾動脈をそれぞれ結紮し止血した。手術時間2時間22分,大動脈遮断時間55分,出血量8,652mLだったが,術後合併症なく15日目に軽快退院した。本例の受傷機転は内臓動脈損傷をきたすほどの高エネルギーではなく,画像所見で大動脈や他の内臓動脈に異常を認めず,本例は脾動脈瘤が突然破裂した孤立性特発性腹腔動脈解離と考えられた。まれな病態であり,本例のような動脈性腹腔内出血に対する術中の止血制御には術前のIABO挿入が非常に有効だった。