2019 年 39 巻 4 号 p. 801-804
近年,動脈瘤破裂に対してIVRによる治療が積極的に行われているが,その致命的な合併症として腹部コンパートメント症候群(以下,ACS)が指摘されている。今回,脾動脈瘤破裂に対する動脈塞栓術後に生じたACSに対して減圧開腹術を施行した1例を経験した。49歳の男性が腹部膨満を主訴に受診し,CTで脾動脈瘤破裂と診断した。IVRでのコイル塞栓で止血し得たが,術直前からの出血性ショックに大量輸血を要した。塞栓での止血の12時間後から呼吸促迫と腹部緊満とを認め,膀胱内圧測定などからACSと診断した。緊急減圧開腹術で3,700gの血腫を除去し,一期的に閉腹した。術後早期から呼吸状態の改善を認め,腹腔内圧の再上昇を認めなかった。術後第29病日に独歩退院した。腹部動脈瘤破裂症例では,非手術治療後でもACSの発症があり得ることに留意し,ACSを発症した際には躊躇せずに減圧開腹術を施行すべきである。