日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
上行結腸,腹壁への直接浸潤と膿瘍形成を認めた高齢者虫垂粘液癌の1例
内田 史武福岡 秀敏片山 宏己
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2019 年 39 巻 5 号 p. 875-879

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抄録

症例は82歳男性,右側腹部痛を主訴に前医を受診し,腹部単純CTで腹腔内膿瘍を認め,当科を紹介受診した。高熱と右側腹部の腫瘤を認め,血液検査で炎症反応の上昇と腫瘍マーカーの軽度上昇を認め,腹部造影CTでは造影効果を伴う右側腹部の液体貯留と,虫垂根部の壁肥厚を認めた。膿瘍に対してCTガイド下ドレナージを行い,炎症軽快の後精査を行った。注腸造影では膿瘍による上行結腸の内側への圧排,虫垂口の閉塞を認め,下部消化管内視鏡では虫垂口の乳頭状腫瘍と上行結腸の潰瘍性病変を認め,生検でいずれもGroup4であった。右半結腸切除,D3郭清,腹壁合併切除を行い,病理結果は虫垂粘液癌,pT4b(腹壁・上行結腸)N0M0,pStage Ⅱcであった。上行結腸と腹壁に同時に浸潤し,膿瘍を形成していた虫垂癌はこれまでに報告がなく,非常にまれな症例と考えられた。高齢者における重症虫垂炎症例では腫瘍合併を念頭に置くべきである。

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© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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