日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
胆囊炎・胆管炎による嘔吐を契機に発症したと思われる孤立性上腸間膜動脈解離の1例
松本 陽松本 俊郎大地 克樹清永 麻紀岡本 和久岩下 幸雄猪股 雅史
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2019 年 39 巻 5 号 p. 993-996

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抄録

急性炎症性疾患と同時に上腸間膜動脈解離が発見された報告は,われわれが調べ得た範囲では過去になく,極めてまれである。症例は高血圧症の既往がある56歳,男性。前日より心窩部痛と嘔吐を認めていたが,再度反復する嘔吐に引き続き,激しい下腹部痛を自覚し,自立歩行が困難となったため,当院に救急搬送となった。来院時,血圧の上昇があり,激痛のため鎮痛・鎮静剤投与下で緊急造影CTを施行した。CT上,総胆管結石と胆囊炎・胆管炎所見に加え,上腸間膜動脈に孤立性解離の所見を認めた。腸管虚血の症状や上腸間膜動脈解離に瘤化がなかったため,保存的加療の方針となり,翌日総胆管結石に対する内視鏡的砕石術が行われた。その後胆囊炎・胆管炎は改善し,孤立性上腸間膜動脈解離も経過とともに真腔狭小化の改善が得られている。自験例では高血圧症による血管脆弱性を背景に,胆囊炎・胆管炎による嘔吐を契機として孤立性上腸間膜動脈解離を生じたものと考えられた。

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© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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