2019 年 39 巻 7 号 p. 1259-1262
症例は70歳台,男性。右下腹部痛,黒色便で受診した。血液生化学検査上炎症反応高値,腹部造影CT検査でS状結腸に接して周囲に造影効果,内部に含気を伴う13cm大の囊胞状構造を認めた。腫瘍は鑑別にあがるも二次性の腹腔内膿瘍と診断し,エコーガイド下経皮的ドレナージを施行,臨床症状は軽快するも,膿瘍の縮小に乏しく確定診断も困難であった。透視下下部消化管内視鏡検査でS状結腸に約5mm大の瘻孔を認めた。同日,腹部所見悪化,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。小腸腸間膜に自壊し壊死を伴う巨大腫瘍を認め,小腸,S状結腸に浸潤をきたしており,小腸広範切除,S状結腸部分切除・単孔式人工肛門造設,洗浄ドレナージ術を施行した。病理組織学的診断は小腸腸間膜GISTの診断であった。腫瘍はS状結腸に瘻孔形成を認めた。特異な症候を呈した小腸腸間膜GISTの1例を経験した。