2019 年 39 巻 7 号 p. 1283-1285
症例は76歳女性。2日間持続する右下腹部痛を主訴に当科を受診した。腹部造影CTで右下腹部に4cm大の腹腔内膿瘍を認めた。25歳時にMayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群による腟欠損に対し,腸管による造腟術を受けたが,その腟形成に用いた回腸盲端と思われる部位に膿瘍形成を認め,入院とし,SBT/ABPCによる保存的加療を施行した。炎症反応,および腹部所見の改善を認め,入院後10日で抗菌薬を終了し,経過良好で翌日に退院となった。その24ヵ月後の現在,再発を認めていない。造腟術で腸管を用いる場合は結腸を用いた再建が多く,回腸を用いた報告例は少ない。また,その合併症としての膿瘍形成の報告例もなく,回腸を含む腸管を用いた造腟術においては長期的な合併症として考慮する必要があると思われた。