2019 年 39 巻 7 号 p. 1287-1291
症例は41歳,男性。腹痛を主訴に前医受診。腹腔内腫瘤と門脈血栓症の疑いで当院へ転院し,ヘパリン投与下で経過観察となった。治療開始後,Hb低下および腹腔内腫瘤の増大を認め,MDCTで腹腔内出血による血腫の圧排に起因する門脈血栓,腹腔動脈起始部圧迫症候群の診断となった。IVRで膵十二指腸動脈瘤に対し,動脈塞栓術を施行した。その後,血腫形成に起因する門脈血流不全に対し,開腹血腫除去術,門脈血栓除去術を施行した。術後経過は良好で,術後第40病日に退院した。術後2年の現在,門脈血流は良好に保たれており,外来経過観察中である。腹腔動脈起始部圧迫症候群に起因する膵十二指腸動脈瘤破裂の報告は多数認めるが,血腫形成に起因する門脈血栓の報告例は極めてまれである。IVRによる止血術後に外科的手術による血腫除去と門脈血流改善を適切なタイミングで行ったことで救命し得た膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験した。