2019 年 39 巻 7 号 p. 1303-1305
症例は67歳男性。右側腹部痛を主訴に当院へ救急搬送,十二指腸穿孔の診断で緊急手術を施行した。十二指腸球部に約半周性の穿孔部を認め,単純閉鎖を施行した。術後4日目にドレーンから腸液の排出を認め,汎発性腹膜炎を呈し,緊急での再手術となった。単純閉鎖した縫合部は完全に離開しており,穿孔部周囲の汚染が高度であったので再縫合は危険と判断し,十二指腸憩室化を行った。再手術後6日目に前上膵十二指腸動脈からの出血をきたし,緊急血管内治療を行った。その後,ドレーン管理に時間を要したが再手術後第78病日で退院となった。胃十二指腸潰瘍穿孔はプロトンポンプ阻害薬が普及した現在,穿孔部縫合閉鎖および大網被覆で軽快する症例も多いが,ときとしてこれらの術式のみでは良好な経過が得られない症例が存在する。今回われわれは,十二指腸潰瘍穿孔術後縫合不全に対する再手術として十二指腸憩室化が有効であった症例を経験したため報告する。