日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
術前診断困難であった大腿輪に嵌頓した膀胱ヘルニアの1例
利田 賢哉由茅 隆文柿添 圭成賀茂 圭介平山 佳愛武谷 憲二皆川 亮介甲斐 正徳梶山 潔
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2020 年 40 巻 3 号 p. 521-524

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抄録

症例は64歳女性。以前より右鼠径部の膨隆を自覚していた。今回,還納困難となり近医を受診し,右鼠径ヘルニア嵌頓の疑いで当院へ紹介となった。来院時は右鼠径部に弾性軟,無痛性の腫瘤を認め,還納は困難であった。血液検査では明らかな異常所見は認めなかった。CT・エコー検査で右鼠径ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。手術所見では鼠径ヘルニアは認めず,大腿輪からヘルニア囊が嵌頓していた。腸管を検索する目的でヘルニア囊と思われる部分を切開すると,膀胱カテーテルを認めた。結果的には膀胱を切開したことになり,その時点で大腿輪をヘルニア門とした膀胱ヘルニアと診断した。膀胱を修復後,McVay法で後壁を補強して手術を終了した。術後7日目には膀胱造影を施行し,膀胱カテーテルを抜去した。術後10日目に自宅退院となった。鼠径部ヘルニア診療の際には膀胱ヘルニアを念頭に置いた画像診断,術中判断が重要と考えられた。

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© 2020, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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