2020 年 40 巻 3 号 p. 517-520
症例は48歳男性。主訴は腹痛,意識消失。仕事中に突然の腹痛を訴え,意識消失した。造影CT検査で中結腸動脈瘤破裂と診断され,当院に救急搬送された。当院搬入時はバイタルサインが安定しており,血管造影検査を施行した。中結腸動脈本幹近位部に動脈瘤を認め出血源と考えられた。中結腸動脈右枝は右結腸動脈と,中結腸動脈左枝は下行結腸の辺縁動脈とそれぞれ交通し,中結腸動脈中枢側で血流を遮断しても横行結腸の血流は維持されると考えられた。止血目的に中結腸動脈瘤のコイル塞栓術を行ったが,塞栓術後の末梢循環は良好であった。治療経過は良好で,腸管壊死の所見を認めず,自宅退院となった。バイタルサインが安定している場合には,動脈瘤破裂症例に対する血管造影検査は診断と治療が同時に可能であり,有用である。また中結腸動脈瘤の部位によっては塞栓術後の結腸切除を回避し得ると考えられた。