2020 年 40 巻 4 号 p. 597-600
症例は65歳,男性。突然の強い右下腹部痛を主訴に当院救急搬送となった。腹部造影CT検査で終末回腸に壁肥厚と閉塞起点を認め,腸閉塞の診断で同日緊急入院となった。禁食と補液による保存的加療を開始したが,改善せず第9病日に回腸部分切除術を施行した。回腸末端より20cm口側の回腸に壁肥厚を伴う強い狭窄を認め,最終病理診断は粘膜の脱落と炎症細胞浸潤,強い線維化を認める以外に特異的な病理組織所見は認めず,単純性小腸潰瘍と診断された。術後経過は良好で第13病日に退院となり,以後再発は認めていない。単純性小腸潰瘍はまれな疾患であり,術前診断に苦慮することが多い。今回われわれは単純性小腸潰瘍による腸閉塞の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。