日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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40 巻, 4 号
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症例報告
  • 鳥居 直矢, 世古口 英, 井上 昌也, 桐山 宗泰, 加藤 健宏, 蟹江 恭和
    2020 年40 巻4 号 p. 527-529
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性。右鼠径部の膨隆を主訴に受診した。CTでは右大腿輪から虫垂が脱出しており,大腿ヘルニアの虫垂嵌頓と診断した。疼痛やイレウス所見を認めなかったため,後日transabdominal preperitoneal repair法(TAPP法)を行った。術中所見では,右大腿輪に虫垂が嵌頓していたため腹腔鏡下に虫垂を腹腔内へ還納した。虫垂は暗赤色であったが,明らかな膿瘍形成を認めなかった。メッシュでヘルニア門を修復した後に,虫垂切除を併施した。鏡視下で一期的にメッシュ修復と虫垂切除を施行したde Garengeot herniaの1例を経験したので報告する。

  • 真田 祥太朗, 福岡 伴樹, 長谷川 雄基, 冨永 奈沙, 水野 亮, 西 鉄生
    2020 年40 巻4 号 p. 531-534
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は85歳男性。4日前からの38度台の発熱で近医より当院に紹介となった。腹部CT検査で,右下腹部腹壁の内部に膿瘍様の腫瘍性病変を認めた。既往は15年前の虫垂炎手術以外に詳細は不明であったが,施設の病歴や創痕からは少なくとも1年以上前の複数回の腹部手術歴が考えられた。保存的加療で全身状態が落ち着いた入院13日目に手術を行うと瘢痕組織内に折りたたまれたメッシュを認め,メッシュ感染による腹壁膿瘍と最終診断した。腹壁瘢痕ヘルニアの遅発性メッシュ感染は,考慮されるべき晩期合併症である。留置部位にかかわらず生じることがあるが,文献検索では腹腔内留置で多く認められ,留置部位は慎重に考慮すべきである。

  • 赤嶺 健吏, 高城 千彰, 渡邉 照彦, 大迫 政彦, 田畑 峯雄
    2020 年40 巻4 号 p. 535-539
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    虫垂憩室炎はまれな疾患で術前診断は困難とされ,虫垂炎として治療されることが多い。腫瘍との鑑別が必要となることもあるが,治療戦略は確立されていない。今回,われわれは腫瘍または膿瘍形成性の急性虫垂炎と術前診断された虫垂憩室炎を経験した。症例は93歳女性で,右下腹部痛の精査で行ったCT検査で,膿瘍形成性の虫垂炎または虫垂腫瘍が疑われた。血液検査で炎症所見を認め,腫瘤性病変の精査より,炎症性疾患の早期治療を優先し緊急手術を施行した。腹腔鏡所見で虫垂先端に約3cmの腫瘤様構造を認めた。虫垂根部を含め腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した。病理診断では虫垂憩室炎であった。虫垂は加齢により萎縮するため高齢の虫垂炎症性疾患はまれとされる。本症例は,本邦で報告された2例目の90歳以上の虫垂憩室炎で貴重な症例と思われた。腫瘍との鑑別と炎症性疾患の治療を同時に考える必要があり,腹腔鏡での観察が方針の決定に有用であった。

  • 中西 亮, 樋口 格, 五十嵐 一晴, 石井 智, 筒井 敦子, 若林 剛
    2020 年40 巻4 号 p. 541-546
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性。胃穿孔による急性汎発性腹膜炎に対し,腹腔鏡下大網充填術,洗浄ドレナージ術を施行された。上部内視鏡検査を施行され,前庭部の潰瘍部分からの生検でadenocarcinomaと診断され,初回手術より約1ヵ月後に幽門側胃切除術,D1郭清,Billoth–Ⅱ再建を行った。術後5日目に発熱を認め,造影CT検査では遺残膿瘍が疑われたため経皮ドレナージを行い経過観察した。透視検査で縫合不全がないことを確認し15日目に経口摂取を開始したところ,ドレーンより食物残渣の漏出を認め,重度縫合不全と診断した。透視下内視鏡を用いての食道経由経腸栄養用チューブ(以下,W–ED tube)による減圧および経腸栄養を開始した。内視鏡検査で離開部の肉芽形成,粘膜再生を認めたため経口摂取を開始し94日目に退院した。重度縫合不全に対してW–ED tubeによる減圧および経腸栄養が奏効した症例を経験したため報告する。

  • 阪本 達也, 栗山 直久, 加藤 弘幸
    2020 年40 巻4 号 p. 547-550
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    小腸出血は比較的まれな疾患であり,血管造影や造影CTで診断されるが,出血点同定は困難で,大量小腸切除や出血点残存となることもある。今回,腹腔鏡下手術とすることで,小腸の牽引操作前に出血部位を含む範囲の口側端を設定し,切除範囲を限定し得た1例を経験したので報告する。症例は82歳女性,下血を主訴に当院へ救急搬送された。大量下血によりショック状態,貧血(Hb 5.7g/dL)となっていた。緊急造影CTでは回腸に造影剤の血管外漏出像を認め,小腸出血と診断し緊急手術を施行した。まず腹腔鏡下に,出血によって内腔に貯留した血液が腸管外から視認できる口側端を小腸切除口側断端としてマーキング施行。小切開創から小腸を体外に誘導し,拡張が強い70cmの小腸を切除,肛門側切除断端からさらに10cm肛門側に小結節を触知したため追加切除を施行し,循環の安定化を確認し手術を終了した。結節部にDieulafoy潰瘍を認めた。

  • 笠井 俊輔, 大司 俊郎, 岩田 乃理子, 長野 裕人, 嘉和知 靖之
    2020 年40 巻4 号 p. 551-554
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は57歳女性。明け方に突然自覚した右背部痛,心窩部痛を主訴に当院へ救急搬送された。来院後に症状は改善したため一度帰宅となったが,4日後の再診時には炎症所見が高値となり,CTで十二指腸下行脚内側に被包化された膿瘍腔を認め,十二指腸憩室穿孔の診断となった。症状は限局していたことから保存的治療の方針とし,十二指腸内の減圧だけでなく経腸栄養も同時に行えるW–ED tubeを挿入した。症状や画像所見は徐々に改善し,11病日に炎症所見も陰性化したため抗菌薬投与を終了した。19病日に減圧tubeの陰圧を解除し,患者に経管栄養管理を指導したうえで,23病日に退院とした。32病日の外来で症状の再燃がないことを確認してtubeは抜去し,その後も症状再燃なく経過している。十二指腸憩室穿孔に対する外科的治療では侵襲の大きな治療が必要となるが,W–ED tubeを用いた保存的治療も選択肢となり得ると考えられた。

  • 林 善仁, 東園 和哉, 間 浩之, 小坂 隼人, 大島 健志, 石松 久人, 大端 考, 大場 範行
    2020 年40 巻4 号 p. 555-558
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    51歳女性。先天性小腸狭窄症に対して生後2日目に手術を受けた既往がある。43歳から腸閉塞を繰り返し,腹痛を主訴に当院を受診した。CT検査で4個の高濃度石灰化像を内包する囊状の拡張腸管がみられ,同部位より口側の腸管に拡張がみられた。Meckel憩室あるいは重複腸管を疑い手術を施行した。術中所見ではバウヒン弁から50cm口側に拡張腸管を認め,先天性小腸狭窄症に対してバイパスした際の腸管吻合部が囊状に拡張したものであることが判明した。囊状の拡張腸管内には3〜4cmの腸石を4個認めた。以上からバイパス吻合部に腸石が嵌頓・脱落し,腸閉塞を繰り返していたと考えられ,吻合部を含めた腸管切除を施行した。術後経過は良好で第6病日に退院した。盲端症候群で発生した腸石に起因する腸閉塞は極めてまれであるため文献的考察を含め報告する。

  • 吉田 諭, 平間 公昭, 水野 豊
    2020 年40 巻4 号 p. 559-562
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    89歳女性。心窩部痛と嘔吐を3日前から認め,腸閉塞疑いで当院紹介となる。CTで縦隔内に横行結腸の脱出を認め,Morgagni孔ヘルニア内に脱出した横行結腸と診断した。X線透視下での下部消化管内視鏡で横行結腸を整復した後に,待機的腹腔鏡下Morgagni–Larrey孔ヘルニア修復術を施行した。胸骨背側の左右にそれぞれヘルニア囊が認められ,右側のヘルニア囊に横行結腸と大網が嵌入していた。ヘルニア囊は切除せず,SymbotexTM Composite Mesh(コヴィディエン社)を用いてメッシュの固定にはヘルニアステープラーに腹壁外結紮法を併用した。併存症や全身状態から緊急手術はリスクが高いと判断し,内視鏡下整復後に待機的手術を施行し,良好な経過が得られた。本疾患に内視鏡下整復後に待機的手術を施行した報告例は少なく,待機的腹腔鏡下修復術は低侵襲で,超高齢者においても安全かつ簡便に施行可能と考えられた。

  • 阪田 敏聖, 横田 良一, 田口 宏一
    2020 年40 巻4 号 p. 563-566
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は,81歳男性。前医のCT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで当科紹介。採血や理学的所見は異常なく,腹膜刺激症状も認めなかった。左鼠径ヘルニアを認めるが,臥位で容易に還納できた。腹部造影CTで著明な腹腔内遊離ガスと腸管気腫を認めたが,腹水は認めなかった。α–グルコシダーゼ阻害薬(α–glucosidase inhibitor:以下,α–GI)を内服しており,便秘傾向も認めた。緊急性はないと判断して,α–GIを約1ヵ月間休薬後に腹腔鏡下ヘルニア修復術の際に審査腹腔鏡を同時に行った。審査腹腔鏡で腸管気腫を認めたが,腸管穿孔を疑う所見は認めなかった。左鼠径ヘルニアはS状結腸が高度癒着しており,鼠径部切開法で修復した。術後1ヵ月のCT検査で腹腔内遊離ガスと腸管気腫は消失していた。腹腔内遊離ガスを伴う腸管囊胞様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:以下,PCI)を1ヵ月間経過観察し,腹腔鏡でも腹腔内観察でき,自然軽快したPCIの1例を経験したので報告した。

  • 市川 英孝, 唐澤 秀明, 鈴木 秀幸, 神山 篤史, 渡辺 和宏, 大沼 忍, 藤島 史喜, 亀井 尚, 海野 倫明
    2020 年40 巻4 号 p. 567-570
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は40歳台女性。当院血液内科において最重症再生不良性貧血に対する免疫抑制療法中に下血を発症した。腹部造影CT検査,上下部消化管内視鏡検査で出血部位を認めず,経口小腸内視鏡検査で空腸に血管腫様の病変あり出血源として疑われたが,検査時には出血なく保存的治療の方針となった。その後再度下血を認め手術目的に当科紹介となった。腹腔鏡下に小腸全長を観察すると,回腸末端から約50cm口側に位置するMeckel憩室を認めた。小開腹後,小腸壁を切開し施行した術中内視鏡所見から,出血源はMeckel憩室と判断し,腹腔鏡補助下小腸部分切除を施行した。術後は良好に経過し,臍帯血移植後に自宅退院となった。再生不良性貧血合併例の手術では,貧血・易感染性・出血傾向などが問題となり,さらに治療中は免疫抑制状態のため,手術施行は躊躇される。今回,腹腔鏡下に準緊急手術を行い良好な経過を得たため,文献的考察を含めて報告する。

  • 河野 秀俊, 寺崎 正起, 鈴村 潔
    2020 年40 巻4 号 p. 571-574
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は86歳の女性。以前より頻回の食後の心窩部痛あり,症状が増悪したため当院救急外来を受診した。胸腹部CT検査で食道胃接合部より頭側に胃が位置するupside down stomach型の食道裂孔ヘルニアと診断し,緊急入院となった。黒色の吐物があったため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体部の粘膜の虚血性所見が認められた。内視鏡による整復を試みたが胃の変形が強く困難であり腹腔鏡下手術を施行した。胃を腹腔内に還納し,開大した食道裂孔を縫縮閉鎖した後に,穹窿部と横隔膜下を縫合固定し,さらにToupet噴門形成術を施行した。経過は順調で再発は認めていない。今回われわれはupside down stomachを呈した食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 新保 敏史
    2020 年40 巻4 号 p. 575-579
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は46歳男性。腹部全体の鈍痛・下痢・嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された。体温は40.5℃,腹部は軟で,心窩部に軽度圧痛を認めた。血液検査では軽度の炎症所見を認めるのみで,腹部CT検査では急性胃腸炎の所見であった。入院後,補液による加療を行ったが,来院約12時間後に突然ショックとなった。Disseminated intravascular coagulation(以下,DIC)を併発しており,救命処置を行ったが,死亡した。病理解剖でDICによる多臓器不全と診断された。後日入院中に採取した血液培養から肺炎球菌が検出されたため侵襲性肺炎球菌感染症と診断した。また入院時のCT検査で脾臓が小さく,体積は38.6mLであり,脾臓低形成であった。脾臓低形成による免疫機能低下の関与が疑われた侵襲性肺炎球菌感染症の症例はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 小倉 皓一郎, 里見 大介, 石毛 孔明, 福冨 聡, 森嶋 友一
    2020 年40 巻4 号 p. 581-584
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳,女性。腹痛を主訴に救急搬送され,広範囲腸管壊死と診断されたが内服していたダビガトランにより著明な凝固障害をきたしていた。緊急手術により壊死腸管切除およびハルトマン手術を施行したが,凝固障害遷延により術後出血が2日間継続した。最終的に止血が得られ,第45病日に転院となった。ダビガトランは一部の症例では血中濃度が上昇し,出血性合併症のリスクが高まるとされているが,拮抗薬投与や血液浄化療法などにより病態改善が図れる可能性があり,腹部救急に携わる医師は対処法を熟知しておく必要がある。

  • 権田 紘丈, 伊藤 哲, 平松 和洋, 柴田 佳久, 青葉 太郎, 有元 淳記
    2020 年40 巻4 号 p. 585-588
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性。数日前から腹部不快感を自覚。意識レベルの低下が出現し当院救急外来へ搬送された。当院到着時Glasgow coma scale=E1V1M1,血圧77/58mmHg,脈拍118回/分であった。CTで胃および膵周囲・後腹膜に気腫像を認めた。重症急性膵炎の可能性を第一に考えたが,消化管穿孔を否定し得ず,緊急手術を施行した。開腹所見で消化管に明らかな穿孔所見は認めなかった。膵臓は全体に腫大し,膵臓周囲に脂肪壊死および赤褐色腹水を認め,術中所見で膵炎による後腹膜気腫と診断した。腹腔内洗浄の後,網囊内にドレーンを留置した。術後は全身管理およびドレーン管理を行った。状態安定に伴い,ドレーン留置のまま術後73日目に自宅退院となった。膵炎による後腹膜気腫をきたした症例の報告は少なく,治療法も確立されていない。若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 椿 貴佳, 田口 誠一, 五井 孝憲
    2020 年40 巻4 号 p. 589-592
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は77歳男性。突然の腹部痛を主訴に当院救急外来を紹介受診した。腹部全体に強い自発痛と圧痛を認め,腹部造影CTで小腸間膜の捻転所見(whirl sign)とS状結腸のclosed loop像を認めた。同日緊急手術を施行し,小腸捻転解除術とS状結腸の腸閉塞解除術を行った。小腸が腸間膜根部を中心に約180度回転しており,S状結腸がTreitz靭帯近傍に嵌入する形で絞扼を生じていた。腸管壊死は認めず,腸管の整復のみで終了した。他に軸捻転の原因となりそうな索状物や癒着,先天異常などは認めなかったので,S状結腸の絞扼を合併した原発性小腸軸捻転症と診断した。本邦では成人の原発性小腸軸捻転症は比較的まれな疾患であり,とくにS状結腸の絞扼を合併した例は極めてまれである。絞扼性腸閉塞の合併であり,治療の時期を逸すると致命的な経過をたどることもあるため,早急な診断と治療が必要である。

  • 吉田 充彦, 当間 雄之, 大塚 将之
    2020 年40 巻4 号 p. 593-596
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は57歳男性。心房細動に対してワルファリン内服中であった。以前より自慰目的に肛門から直腸内へ約30cmの棒を挿入していた。翌日から下腹部痛を認めたが様子を見ていた。自慰行為2日後の未明に腹痛が増悪したため救急要請し当院救急搬送された。血圧40mmHgとショック状態であったが急速補液で循環の安定を得た。腹部CTを撮影したところ直腸間膜内に血管外漏出像を伴う巨大血腫と多量の血性腹水を認めた。明らかな腹腔内遊離ガスは認めなかったが,問診情報を踏まえ,異物による直腸・直腸間膜損傷および腹腔内出血と診断し,緊急手術を行った。開腹すると直腸間膜に形成された血腫から活動性の出血が確認された。縫合止血は断念し損傷部を含めて直腸・直腸間膜を切除し,人工肛門を造設した。直腸異物によりショックに至る腹腔内出血を起こしうるため,可能性がある場合は適切な問診により診断・治療を進めることが望ましいと考えられた。

  • 田島 康平, 益子 太郎, 増岡 義人, 山本 聖一郎, 小澤 壯治, 中郡 聡夫
    2020 年40 巻4 号 p. 597-600
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性。突然の強い右下腹部痛を主訴に当院救急搬送となった。腹部造影CT検査で終末回腸に壁肥厚と閉塞起点を認め,腸閉塞の診断で同日緊急入院となった。禁食と補液による保存的加療を開始したが,改善せず第9病日に回腸部分切除術を施行した。回腸末端より20cm口側の回腸に壁肥厚を伴う強い狭窄を認め,最終病理診断は粘膜の脱落と炎症細胞浸潤,強い線維化を認める以外に特異的な病理組織所見は認めず,単純性小腸潰瘍と診断された。術後経過は良好で第13病日に退院となり,以後再発は認めていない。単純性小腸潰瘍はまれな疾患であり,術前診断に苦慮することが多い。今回われわれは単純性小腸潰瘍による腸閉塞の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

  • 大西 敏雄, 上田 順彦, 三浦 聖子, 甲斐田 大資, 小坂 健夫
    2020 年40 巻4 号 p. 601-604
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    フルニエ壊疽は痔瘻,肛門周囲膿瘍や泌尿器科疾患が原因となる場合が多く直腸癌を原因に発症した報告は少ない。今回直腸癌の穿通によりフルニエ壊疽を発症した1例を経験したので報告する。症例は70歳台男性で発熱,右下腹部痛を主訴に近医受診。腹部CTで直腸癌穿通と診断され人工肛門造設術を施行された。しかし,炎症反応の改善が乏しいため当院に紹介となった。直腸癌穿通のフルニエ壊疽と診断し緊急でのデブリードマンを施行した。洗浄とデブリードマンを繰り返し炎症反応は鎮静化した。デブリードマンを施行した部位からのアルブミン漏出が激しく血行動態安定のために下肢切断術を選択した。術前より肺転移を認めていた症例であり全身化学療法による治療を行ったが術後8ヵ月後に永眠された。

  • 小野 仁
    2020 年40 巻4 号 p. 605-607
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は47歳,女性。9日前に心窩部痛で発症し,3日前より右下腹部に痛みが限局してきた。発熱も出現し,当院消化器内科を受診した。右下腹部に圧痛を認め,採血検査で軽度の炎症反応上昇を認めた。CTで,虫垂の腫大と壁肥厚,周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。急性虫垂炎の診断で手術目的に当科紹介となった。急性虫垂炎と診断し,同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。病理組織学的に,低異型度虫垂粘液性腫瘍と診断された。低異型度虫垂粘液性腫瘍は,組織学的には良性でも,破裂や粘液の漏出で腹膜偽粘液腫をきたす可能性があり,虫垂切除の際には,愛護的操作と断端の確実な確保が求められる。今回われわれは,術後病理検査ではじめて診断された低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する。

  • 久木田 和晴, 渡久山 晃, 長谷川 格
    2020 年40 巻4 号 p. 609-613
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    閉鎖孔ヘルニアは痩せ型,高齢の女性に多い疾患である。治療の基本は手術であり,種々の術式報告が散見されるが,確立されたものが存在しないのが現状である。今回われわれは,閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対し腹腔鏡下に水圧法による整復およびヘルニア囊反転高位結紮を施行した1例を経験したので報告する。症例は86歳,女性。数時間前より発症した,右大腿部痛を主訴に当院へ救急搬送された。CTで右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。腹腔鏡下経腹法でアプローチし,水圧法による整復後,ヘルニア囊の反転高位結紮を施行した。経過良好で術後第10病日に退院となった。上記術式は,低侵襲かつ簡便であり,緊急手術時において第1選択となり得ると考えられた。

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