2021 年 41 巻 1 号 p. 53-58
成人の大腸重積症は比較的まれだが,その多くは大腸癌が原因であり,成人の大腸重積症では常に大腸癌の可能性を念頭に置く必要がある。しかし,若年成人の大腸癌罹患率は低く,若年成人が腸重積を契機として大腸癌が発見されることは極めてまれである。今回われわれは腸重積を契機に発見された若年性大腸癌の1例を経験したので報告する。症例は20歳の男性で,下血を主訴に当院を紹介受診された。腹部エコーおよび造影CT検査でS状結腸腸重積と診断されたが,腫瘤は指摘できなかった。下部消化管内視鏡検査施行時には重積は解除されており,S状結腸に1型腫瘍が認められた。生検でS状結腸癌と確定診断され,腸重積は解除されていたため,待機的に腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した。術後経過は良好で,術後14日目に退院された。術後補助療法は施行せず経過観察しており,術後48ヵ月の現在無再発生存中である。