2021 年 41 巻 5 号 p. 359-362
症例は87歳女性で,前日からの水様性下痢便,嘔吐を主訴に近医を受診し精査加療目的に当院へ紹介となった。腹部CT検査で小腸の広範な拡張および骨盤底背側部にtarget signを認めたことから腸重積症に伴う腸閉塞と判断し同日緊急手術を施行した。開腹所見では回腸に腸重積を認め,Hutchinson手技による整復後にバウヒン弁より口側50cmに腫瘤を触知したため,小腸部分切除術を施行した。切除標本の病理組織学的所見は囊胞状小腸リンパ管腫の診断であった。小腸リンパ管腫は小腸腫瘍のなかでもまれな疾患であるが,なかでも囊胞状小腸リンパ管腫の占める割合は少ない。成人発症の腸重責症の一因として本病態も念頭に置く必要がある。