日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
保存的治療で経肛門的に排石された胃石症の1例
山村 明寛八巻 孝史海野 倫明松本 純
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2021 年 41 巻 6 号 p. 439-441

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抄録

症例は88歳女性。認知症があり,食事は全介助であった。前日夕方からの嘔吐を主訴に当院外来を受診した。腹部造影CT検査で,小腸内に嵌頓する35mm大の胃石による腸閉塞と診断した。全身状態が落ち着いていたため,手術も視野に入れつつイレウス管挿入のうえ保存的に治療を開始した。入院翌日には上行結腸に造影剤が流出し,入院4日目には胃石を横行結腸内に認めた。入院7日目に注腸造影とともに肛門より排石された。同日イレウス管を抜去し,入院14日目に退院した。胃石は腸閉塞や穿孔を引き起こし手術が必要となることが多い。また手術を回避する際には,内視鏡的破砕術などの侵襲的な処置を要する。胃石がイレウス管のみの保存的治療で直腸まで移動し経肛門排出されたという報告はなく,症例によっては手術を回避できる1つの選択肢となりうる。ただし,その適応と治療継続のための経時的な評価が重要である。

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© 2021, Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
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