2021 年 41 巻 6 号 p. 465-468
症例は75歳男性で,右鼠径部の膨隆を主訴に前医を受診した。膨隆は容易に還納されたが,整復後のCTで腸閉塞が疑われた。イレウス管が挿入されたが改善せず,整復5日後に当院に搬送された。前医のCTで右下腹部にproperitoneal hernial sac sign,同部位の小腸にcaliber changeを伴うbeak signを認めた。右鼠径ヘルニア偽還納の診断で緊急手術を行った。下腹部正中切開で開腹,腹膜前腔に小腸が嵌頓しており,用手的に整復した。解除した小腸に血流障害はなく,腸管切除は行わなかった。鼠径管内にヘルニア囊の脱出は認めなかった。腹膜前腔にPROLENEⓇ Mesh(Ethicon社)を挿入した。日本ヘルニア学会による分類はM1型であった。本疾患に特徴的な画像所見を確認することで診断は容易である。ヘルニア還納後の腸閉塞にはCTを施行し,的確な診断,早期手術を行うことが重要である。