2021 年 41 巻 7 号 p. 547-550
症例は68歳,男性。腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行後,近医でフォローされていた。嘔気,食思不振,全身倦怠感を主訴に近医を受診し,直腸穿孔,後腹膜膿瘍,人工血管感染と診断された。保存的治療で改善せず手術目的に当科紹介された。腹部は圧痛なく,CTで人工血管周囲の膿瘍形成と直腸RSへの交通を認めた。緊急で,心臓血管外科と合同で右腋窩-両側大腿動脈バイパス術,人工血管抜去術,ハルトマン手術を施行した。術中所見で直腸RSの穿孔部とYグラフト左脚が近接しており,人工血管の刺激による直腸穿孔と診断した。術後経過は良好で第25病日に退院した。人工血管置換術後に起こる人工血管感染は予後不良な合併症である。消化管穿孔に伴う人工血管感染はまれで,直腸穿孔が原因であった報告はない。保存的治療は難しく,本症例では感染巣のデブリードマンおよび非解剖学的血行再建により救命し得た。