2021 年 41 巻 7 号 p. 551-555
呼吸困難および起坐呼吸を呈した感染性多発性肝囊胞の症例を経験したので報告する。76歳の女性が呼吸困難,起坐呼吸を主訴に近医より紹介された。CT検査では多発性肝囊胞と肝右葉に13cm大の巨大肝囊胞を認め,この大きな囊胞が心臓,横隔膜,下大静脈,上部消化管を圧迫していた。圧迫を解除するため,ただちに経皮経肝ドレナージ術を施行した。臨床症状はすみやかに改善した。排液からは連鎖球菌が分離され,感染性肝囊胞と診断した。根治的処置として,第15病日にオレイン酸モノエタノールアミンによる硬化療法を行ったところ良好に経過した。呼吸困難,起坐呼吸の成因としては,左室の収縮力低下は認められず,心臓の拡張障害が考慮された。また横隔膜挙上が及ぼす影響も考えられた。今後,呼吸困難,起坐呼吸の症状を呈する症例についてもさらなる解析と蓄積が求められる。