2022 年 42 巻 6 号 p. 691-694
Crohn病の尿路合併症として消化管膀胱瘻が知られているが,消化管尿膜管瘻の報告は非常に少ない。症例は26歳,男性。数年前より断続的な発熱・下腹部痛・糞尿を認め,尿膜管遺残症が指摘された。さらに,消化管精査で小腸型Crohn病と診断され,回腸狭窄部で尿膜管との瘻孔形成が指摘され手術目的に当院紹介となった。Crohn病と尿路感染に対して内科治療を行い,炎症を制御した後に手術を施行した。手術では回腸・尿膜管・膀胱の一部を一塊に摘出した。標本では回腸同士の瘻孔形成部に一致して尿膜管にも瘻孔を形成していた。尿膜管遺残は臍炎などの感染を契機に診断されることが多いが,本例ではCrohn病発症後に瘻孔を形成したことで症状が顕在化したと考えられた。術前診断し得たことで内科治療を先行させ,腸管および膀胱の炎症を鎮静化後に安全に手術を施行した1例を経験したので報告する。