日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
42 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
症例報告
  • 林 秀行, 前田 祐助, 尤 礼佳, 廣瀬 茂道, 原田 裕久
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 643-646
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は27歳,男性。20XX年3月,食後の腹痛,頻回嘔吐で近医へ緊急搬送された。腸閉塞の疑いで当院へ転院した。腹部骨盤CTでは,骨盤腔内の回腸にcaliber changeがあり,同部口側にMeckel憩室を疑う拡張した腸管を認め,ここが閉塞起点と考えられた。腸管虚血はなく,イレウス管挿入による保存的加療で症状は改善したが,食事再開後に腹部症状が再燃したため,腹腔鏡下手術を施行した。手術所見では,回腸末端より60cm口側に腸間膜対側にT字路の小腸を認め,重複腸管が疑われ,回腸楔状切除術を行った。病理組織学的所見では,正常腸管の壁構造を有し,かつ隣接する腸管と連続した粘膜と筋層構造を認めたため回腸重複腸管と診断した。重複腸管はまれな疾患であるが,急性腹症の鑑別疾患として考慮すべきである。治療は小腸部分切除が選択されることが多いが,腹腔鏡下に楔状切除で手術できる可能性が示唆された。

  • 林 孝朗, 絹田 俊爾, 羽成 直行, 鈴木 博也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 647-650
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は21歳,女性。自閉症と精神発達遅滞の既往があり精神科で医療保護入院中に,嘔吐を認めた。腹部CT検査で胃内に高吸収の薄い異物が充満していた。以前にも異食歴があり,胃内異物による嘔吐と診断し,上部消化管内視鏡による異物摘出術を施行した。異物は硬化した塩化ビニル手袋であり,大部分を回収できたが,最後の1枚が頸部食道に嵌頓した。緊急手術を行い,頸部食道を切開し回収した。精神発達遅滞患者や認知症患者における塩化ビニル手袋の異食の報告は少なくない。本人や目撃者による異物摂食の聴取が困難な場合,塩化ビニルは特徴的なCT像を呈さないため画像的な診断は難しい。塩化ビニル手袋は硬化を起こすことが知られており,長期留置例では自然排泄を待たずに早急に回収する必要があると考える。今回われわれは塩化ビニル手袋を内視鏡的異物摘出術施行中に頸部食道に嵌頓し外科的摘出術を行った1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

  • 菅 淳, 瀬山 厚司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 651-653
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,女性。11年前に移動盲腸に伴った盲腸軸捻転症に対して,内視鏡的整復後に腹腔鏡下盲腸固定術を施行した。今回,下腹部痛を主訴に受診し,精査の結果盲腸軸捻転症再発と診断した。内視鏡的整復は困難で,緊急手術を施行した。開腹所見で,後腹膜への固定は完全に解除されており,盲腸を中心として時計回りに720度回転していた。盲腸から上行結腸中央部までが著明に拡張し漿膜裂傷を認めたため,回盲部切除術を施行した。盲腸軸捻転症は,腸回転異常による移動盲腸に伴って発生するまれな疾患である。腸管壊死のある症例では腸管切除が必要であるが,腸管壊死のない症例に対する治療方針は,いまだコンセンサスは得られていない。今回われわれは,腸管壊死のない盲腸軸捻転症に対する腹腔鏡下盲腸固定術後11年を経て再発した症例を経験した。盲腸軸捻転症に対する術式と再発予防について,文献的考察を加え報告する。

  • 山口 真和, 坂本 英至, 法水 信治, 尾辻 英彦, 田中 祐介, 吉野 将平, 青木 奎司朗, 千葉 陽永, 鈴木 真理香, 渋谷 英太 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 655-658
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は6歳男児,腹痛と頻回の嘔吐を認め当院受診。初診時のCTで回腸の嵌入を伴うWinslow孔ヘルニアと診断した。当初は腹部所見が乏しく,腸管虚血の所見を認めず,経鼻胃管による減圧での改善を期待した。しかし,翌日腹部所見の増悪を認め,緊急手術を施行した。腹腔鏡下での嵌頓腸管整復を試みたが,腸管拡張による視野不良のため断念し,開腹移行した。Winslow孔に嵌入した回腸に壊死を認めず,腸切除は不要だった。Winslow孔は開大を認めず,縫合閉鎖などの操作は行わなかった。術後7日目に退院し,術後1年経過して現在まで無再発である。小児Winslow孔ヘルニアはまれな疾患であり,報告する。

  • 森 千浩, 稲村 幸雄, 延廣 征典, 穐山 竣, 外川 雄輝, 寺田 剛, 武澤 衛, 森川 彰貴
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 659-662
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    特発性食道破裂は,食道内圧の急激な上昇により食道壁が破裂する疾患である。発症はまれであるが,死亡率が高い。胸部下部食道左壁に好発し,術式は左開胸アプローチが選択されることが多い。本稿では,開腹アプローチで縫合閉鎖を行った特発性食道破裂の4例を報告する。患者の年齢は48~74歳で,全例が嘔吐後に発症した。穿孔部は全例が胸部下部食道であり,CTで診断後,上腹部正中切開で手術を行った。術後の在院日数は35~45日であった。これら4例と左開胸アプローチで手術を行った3例を比較したところ,開腹群は開胸群より手術時間が短かった。開腹アプローチは視野が悪く,胸部中部食道より口側の操作が困難である。しかし分離肺換気の必要がなく,仰臥位のまま,同一術野で腸瘻造設,穿孔部の被覆および両側胸腔の洗浄ができるため,胸部下部食道の特発性食道破裂に対しては麻酔管理と手術操作の面で有用な術式といえる。

  • 能美 昌子, 藪田 愛, 井戸 弘毅, 鈴木 隆志, 瀧口 翔也, 木村 圭一, 利光 鏡太郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 663-669
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    40年前に十二指腸潰瘍に対し幽門側胃切除術を施行した既往のある69歳男性。突然の上腹部痛と頻回の嘔吐を主訴に受診した。腹部骨盤造影CT検査で残胃空腸吻合部付近の小腸が残胃内に陥入し,典型的なtarget signを呈していた。吻合部近傍小腸の残胃内への重積と診断し,緊急手術を施行した。Billroth Ⅱ法で再建されており,輸出脚が残胃内に逆行性に重積していた。腸管壊死を認めず,用手的な整復のみで終了とした。4ヵ月後同様の症状で受診し,CT検査で再発を認めたため,再度開腹,吻合部を離断しRoux-en-Y法に再建方法を変更した。術後3年間再発を認めていない。胃切除後の吻合部に関連した腸重積は比較的まれな病態である。今回われわれは,観血的整復の後早期に再発をきたし,再建方法の変更を余儀なくされた症例を経験したので報告する。

  • 宇宿 真一郎, 名田屋 辰規, 山本 順啓, 金井 信恭
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 671-674
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    回腸導管傍ストーマヘルニアは膀胱全摘および回腸導管造設後の合併症の1つであるが,嵌頓に伴う回腸導管穿孔の報告例はない。回腸導管傍ストーマヘルニア嵌頓に対する外科的治療中に,漏出部位不明の回腸導管穿孔に対して保存的加療で軽快した症例を呈示する。症例は56歳男性で,血尿と腹痛を認め当院へ搬送された。回腸導管傍ストーマヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。嵌頓腸管に異常はなかったが,回腸導管に留置したFoley catheterより注入したインジゴカルミンの腹腔内への漏出を認めた。副損傷を危惧しドレーン留置のみで,筋膜を縫合閉鎖し手術を終了した。術後に尿量低下と排液の増加を認めたため単純CT検査を施行したところ回腸導管からの(術前に使用した)造影剤の漏出を認めた。減圧目的に回腸導管にネラトンカテーテルを留置したところ尿量の回復と排液の減少を認めた。ドレーンを術後7日目に抜去し,同日退院した。

  • 一瀬 諒紀, 高橋 誠, 佐々木 隆義, 林 達也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 675-679
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は59歳男性。左季肋部痛,発熱を主訴に救急搬送された。CTでは脾臓内に不整な充実成分を伴う腫瘤を認め,腫瘤周囲,肝表面,骨盤内に血液を疑う液体貯留を認めたことから,脾腫瘤破裂による腹腔内出血の診断となった。可溶性IL-2レセプターの上昇を認め,脾原発悪性リンパ腫が疑われた。診断的治療目的に脾臓摘出術を施行した。脾腫瘤に一致して裂創を認め,出血の原因と考えられた。術後膵液瘻を認めたが保存加療で改善し,第21病日に退院した。病理組織所見より脾原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断となった。現在,術後16ヵ月が経過し,complete metabolic response(CMR)を維持している。非外傷性脾破裂により発見される脾原発悪性リンパ腫は非常にまれである。脾腫瘤破裂においては,術後化学療法を見据え,脾臓摘出術による診断的治療を積極的に検討する必要がある。

  • 佐藤 孝幸, 須賀 弘泰, 出口 善純, 中川 隆雄
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 681-685
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    意識障害を呈する肝性脳症の成因にはWilson病,尿素サイクル酵素欠損症,アミノ酸代謝異常症などの代謝障害,肝実質機能の広範囲な障害などの他に,門脈-大循環短絡路などがあげられる。今回われわれは,頻回に繰り返す高アンモニア血症から発見された上腸間膜静脈-左腎静脈短絡路症に対し,バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:以下,B-RTO)を施行したところ良好な結果を得た。症例は68歳,男性。過去に3回,原因不明の意識障害で入院歴があった。今回高アンモニア血症から上腸間膜静脈-腎静脈短絡が見つかり,B-RTOを施行した。その結果,アンモニア値は低下し,意識障害も改善し,その後再発はみられていない。門脈-大循環短絡路を有する非肝硬変性肝性脳症に対してはB-RTOが有効であると考えられた。

  • 丹羽 弘貴, 高橋 亮, 鈴置 真人, 和田 秀之, 水沼 謙一, 植木 知音, 木村 伯子, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 687-690
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    術前に回腸憩室穿通と診断し得た1例を経験したので報告する。症例は77歳,男性。1週間前から続く発熱・嘔吐・腹痛を主訴に受診した。来院時,右下腹部に圧痛があったが,腹膜刺激症状は認めなかった。単純CTのmultiplanar reconstruction(MPR)画像で回腸末端の憩室とその周囲の脂肪織濃度上昇・ガス像を認め,腸間膜内への回腸憩室穿通と診断した。保存治療の方針としたが,入院第3病日で腹部圧痛範囲の拡大・血液所見の増悪を認めたため,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。切除標本では,バウヒン弁より4cm口側の回腸に仮性憩室と腸間膜側への穿通が確認された。回腸憩室穿通は保存治療が奏効しない例が多く,虫垂炎や上行結腸憩室炎との鑑別を十分に行う必要がある。自験例では診断にはCT検査のMPR画像が有用であった。

  • 丸山 大貴, 市川 英孝, 小林 実, 梶原 大輝, 唐澤 秀明, 神山 篤史, 大沼 忍, 亀井 尚, 海野 倫明
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 691-694
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    Crohn病の尿路合併症として消化管膀胱瘻が知られているが,消化管尿膜管瘻の報告は非常に少ない。症例は26歳,男性。数年前より断続的な発熱・下腹部痛・糞尿を認め,尿膜管遺残症が指摘された。さらに,消化管精査で小腸型Crohn病と診断され,回腸狭窄部で尿膜管との瘻孔形成が指摘され手術目的に当院紹介となった。Crohn病と尿路感染に対して内科治療を行い,炎症を制御した後に手術を施行した。手術では回腸・尿膜管・膀胱の一部を一塊に摘出した。標本では回腸同士の瘻孔形成部に一致して尿膜管にも瘻孔を形成していた。尿膜管遺残は臍炎などの感染を契機に診断されることが多いが,本例ではCrohn病発症後に瘻孔を形成したことで症状が顕在化したと考えられた。術前診断し得たことで内科治療を先行させ,腸管および膀胱の炎症を鎮静化後に安全に手術を施行した1例を経験したので報告する。

  • 植木 智之, 亀井 武志, 吉川 徹二, 土師 誠二
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 695-698
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は86歳,女性。数日前からの嘔吐を主訴に当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査では内腔の閉塞で十二指腸へ到達できず,腹部CT検査では胃前庭部が短軸捻転を伴って胸腔内へ脱出していたため,upside down stomachを伴う食道裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した。はじめに食道裂孔に嵌頓した胃前庭部を腹腔内に還納すると,胸腔内に突出する7cm大のヘルニア囊を認め,固着した胃噴門部が確認できた。胃全体を腹腔内に還納した後,食道裂孔を2-0合成吸収糸で縫縮した。続いて食道裂孔をコンポジットメッシュで被覆し,吸収性タッカーで固定して補強した。さらにNissen法で噴門形成術を追加して手術を終了した。Upside down stomachを伴う食道裂孔ヘルニアに対して,メッシュによる補強を併施する腹腔鏡手術は有効な治療選択肢となりうると考えられた。

  • 上田 康二, 萩原 信敏, 野村 務, 松田 明久, 栗山 翔, 吉田 寛
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 699-703
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    鼠径ヘルニア手術において腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal hernia repair:以下,TAPP)を選択する施設が増加している。TAPPでは従来の前方アプローチ法と比較して発症率の高い合併症があり,術後の腸閉塞もその1つである。TAPP術後の腹膜閉鎖部間隙より腹膜前腔への小腸の嵌入が引き金となり腸閉塞を発症した2症例を経験したので報告する。症例は86歳男性と79歳男性。前者は術後18日目,後者は術後2日目に腸閉塞の診断で緊急手術を行った。いずれも腹膜閉鎖部の間隙より腹膜前腔に小腸が嵌入したことが契機となり腸閉塞を発症していた。前者は腸切除を要し,後者は腹膜間隙の再縫合のみで手術を終了した。TAPPを施行する際は,確実な腹膜閉鎖を行うことが肝要であり,腸閉塞が疑われた際には早急な対応が重要であると考えられた。

  • 石堂 博敬, 川端 洸斗, 箱崎 悠平, 千田 貴志, 齋藤 一幸, 吉富 秀幸
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 705-708
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性。膵体部癌に対して化学療法後,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行。術後胃内容排泄遅延となり経腸栄養管理としていたが,術後20日目に発熱,21日目にショック症状をきたした。集中治療管理を行うも改善なく心停止となった。蘇生後の左室収縮能は8%と低下し,酸素化不良,血圧管理が困難であったため,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:以下,ECMO)導入の方針となった。ECMO導入後は徐々に心機能は改善し,全身状態も安定したため,導入後12日目にECMO離脱となった。本症例は経腸栄養からのSerratia感染症,それによる敗血症性心筋症が疑われた。敗血症に対するECMOの導入は議論の残るところであるが,敗血症性心筋症に対する使用は有効とする報告もあり,十分な感染管理のもとでの使用は考慮されるべきと考える。

  • 久保山 侑, 鈴木 修司, 島崎 二郎, 下田 貢
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 709-712
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性,20XX年4月に自慰目的でバイブレーターを肛門より挿入し抜去不能となったため当科紹介受診となった。CT検査で直径4cm,高さ18cmのバイブレーターを認めた。救急外来で用手的摘出を試みるが摘出できず鉗子類を使用するも把持困難と判断し,全身状態が安定していたため翌日全身麻酔下砕石位での抜去を試みることとした。手術室で内視鏡,X線透視準備のもと高砕石位として下肢挙上,股関節を屈曲させ腹部を圧迫した状態で用手的に摘出を試みたが,摘出困難であった。さらに内視鏡で異物の位置を確認し鉗子で把持を試みたが,円筒状のため把持困難で摘出できなかった。最終的にX線透視下で外科医指示のもと手掌の小さい他科医師に依頼し用手的摘出に成功した。合併症を認めず術後第3病日で退院となった。直腸異物は摘出困難なことも経験されるため,文献的考察を含め報告する。

  • 大山 智宏, 北薗 正樹, 池田 直隆, 豊崎 良一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 42 巻 6 号 p. 713-716
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,女性。右季肋部痛と呼吸苦を主訴に当院を受診した。胸腹部CT検査で横行結腸と小腸と大網が右胸腔側に脱出しており,Morgagni孔ヘルニアの診断で手術の方針とした。手術は腹腔鏡下に行う方針とした。胸骨右後面にヘルニア門を認め,術前診断の通りMorgagni孔ヘルニアであった。ヘルニア門は7×5cm大で横行結腸と小腸と大網が陥入していたが,容易に還納することができた。腹腔鏡下にヘルニア門を縫合閉鎖し,メッシュ(SymbotexTM Composite Mesh:Medtronic社)を併用した。経過良好で術後7日目に軽快退院した。術後2年を経過したが,現在のところ再発は認めていない。Morgagni孔ヘルニアに対する腹腔鏡手術の報告は少なく,現在のところ確立された治療法はない。本疾患に対する腹腔鏡手術は簡便,低侵襲であり有用な方法であると考えられた。

Letter to the Editor
feedback
Top