2023 年 43 巻 5 号 p. 845-851
膵切除は消化器手術のなかでも難易度が高い手術であり,術後合併症発生率もいまだ高率である。なかでも出血性合併症は,もっとも重篤な合併症であり,致死的となる可能性がある。主に膵液瘻に伴う仮性動脈瘤形成が出血源となることが多く,適切なドレーン管理による膵液瘻治療がその予防の鍵となる。膵切除術後にドレーンの血性排液や消化管出血を認めた場合は,積極的に腹腔内出血を疑い迅速に造影CTや血管造影を行い出血源の同定に努めるべきである。治療は血管内治療(IVR)が第一選択であるが,肝動脈塞栓では肝機能障害や肝膿瘍を併発する可能性があり,最近では血流を温存しつつ止血可能なカバードステントグラフトの有用性も報告されている。ただし,IVRで対応不能な症例も一定数存在するため開腹止血術も考慮した迅速かつ適切な治療法選択が不可欠である。