2025 年 45 巻 1 号 p. 46-51
症例は68歳の女性。卵巣癌ⅢC期に対して左右横隔膜を含む腫瘍減量切除後の化学療法中であった。腹痛,胸痛,呼吸困難を主訴に当院救急外来を受診され,造影CTで左横隔膜ヘルニア嵌頓に伴う胃穿孔,急性胸腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した。胃体上部前壁に2cmの穿孔部,左横隔膜に 4cm大のヘルニア門を認め,胃局所切除術,胸腔内・腹腔内洗浄ドレナージ術,横隔膜ヘルニア修復術を施行した。免疫不全状態かつ敗血症性ショックに伴うDICを呈したが順調に回復し,術後6日目に抜管,術後24日目に自宅退院した。横隔膜ヘルニアの発症原因は,吸収糸による横隔膜穿通部の修復または熱損傷と推察した。横隔膜やその周囲を扱う手術では横隔膜ヘルニア発症の可能性を認識し,さらに悪性疾患に対する化学療法が予定される場合は発症および重症化リスクが高いと考えられるため,非吸収糸による縫合または補強が必要であると考えられた。