2025 年 45 巻 7 号 p. 631-635
症例は50歳台,女性。半年前より左腰背部痛を認めていた。疼痛は徐々に悪化し,高熱,左大腿部痛と腫脹も出現し起立困難となったため当院を受診した。血液検査では白血球数18,770/μL,CRP21.7mg/dLと高値を示し,腹部造影CT検査で左腰背部から大腿にかけて膿瘍の貯留を認めた。S状結腸穿通が疑われたため,同日に緊急で腹腔鏡下横行結腸人工肛門造設術および左大腿部の切開排膿ドレナージ術を施行した。術後の下部消化管内視鏡検査でS状結腸憩室穿通と診断し,第48病日に退院した。初回手術から約6ヵ月後,S状結腸切除術,人工肛門閉鎖術,および回腸人工肛門造設術(covering stoma)を施行し,さらにその約6ヵ月後に回腸人工肛門閉鎖術を施行した。術後は合併症なく経過し,第10病日に退院した。憩室穿通による膿瘍は,その診断の遅れから致命的な経過につながる可能性がある病態であり,初期治療としてのすみやかな人工肛門造設およびドレナージ加療が不可欠であった。広範な感染制御のため三期的手術を要したが,段階的なアプローチにより良好な治療成績が得られた。