2026 年 46 巻 3 号 p. 426-430
鼠径ヘルニア嵌頓に対する緊急手術において,膀胱ヘルニアの合併はまれであるが,術中の予期せぬ遭遇は膀胱損傷をきたす危険がある。今回,CTで膀胱ヘルニアの合併を術前診断し,膀胱損傷を回避して安全にTAPP法を施行し得た1例を経験した。症例は84歳,男性。腹部膨満と右鼠径部痛で救急搬送された。造影CTで右鼠径ヘルニア囊内への小腸および膀胱の嵌頓を認め,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察し,小腸と膀胱に血流障害はなく小腸および膀胱部分切除は不要と判断した。嵌頓した膀胱は損傷なく剝離し,TAPP法でヘルニア修復を行った。術後合併症なく術後9日目に退院した。膀胱ヘルニアは術中に予期せず遭遇すると膀胱損傷のリスクが高いが,自験例は,鼠径ヘルニア嵌頓においてCTで膀胱ヘルニアの合併を適確に術前診断することが,膀胱損傷の回避に重要であり,その診断に基づくTAPP法が安全かつ有効な治療戦略であることを示唆する。