70歳男性患者。高血圧症および糖尿病の既往歴あり。主訴として腹痛と下痢を呈した。当院入院5日前に他施設を受診し腸炎と診断されたが,症状が改善せず摂取困難をきたしたため当科へ紹介された。CT検査で回腸壁の薄化,血流障害,近位腸管拡張が認められ,小腸壊死が疑われた。緊急手術を施行した。回腸の全周性壊死および隣接領域における間欠的な部分壊死を確認した。20cmの回腸切除および吻合術を実施した。経過は順調で,入院13日目に退院した。病理検査ではコレステロール結晶を含む血栓塞栓症と診断された。本症は通常,大動脈や大血管におけるアテローム性プラークの破裂によりコレステロール結晶が小動脈に塞栓し,全身性多臓器不全を引き起こすが,小腸穿孔はまれである。明らかな誘因因子なしに生じた本症例の小腸穿孔について,文献を含め報告する。