2003 年 23 巻 5 号 p. 837-842
急性肺障害 (ALI) の原因となる疾患はsepsisが最多であり, 生体の侵襲に対する反応として多臓器不全の一つとして発症することが多い. 最近, 手術手技や術後管理の向上により高齢者や免疫機能低下症例に手術治療が選択される機会が増加してきた. 明らかな感染巣の同定できないsepsisの存在がクローズアップされ, 治療上大きな障害となってきている. 血液浄化療法は, エンドトキシンや各種メディエーターを除去し, 過剰に産生されたhumoral mediatorの除去や, さらには組織浮腫の除水効果を介して, 組織酸素代謝の改善をも期待できる. 今回われわれは, 縫合不全や腹腔内膿瘍などの感染巣が不明な術後sepsisに併発した急性肺障害に対して, 血液浄化療法が奏功した3例を経験したので報告する.