2003 年 23 巻 5 号 p. 843-847
当科では, 左側結腸癌イレウス症例に対し術前に金属ステントを挿入し狭窄を解除するStent Endoprosthesis for Colorectal Cancer (SECC) を施行し良好な手術成績を得てきた. 今回われわれは低左心機能および腎機能障害を伴った直腸癌イレウス症例に対しSECCを施行し, 待期手術を行い軽快した症例を経験したので報告する. 症例は66歳男性. 既往歴は心房細動, 糖尿病, 虚血性心疾患. 1999年12月11日呼吸困難が出現し, 当院救急外来受診. 入院時NYHAIIIの低左心機能およびイレウスと診断. 大腸内視鏡検査で, 直腸に全周性の腫瘍を認め, SECCを施行した. これによりイレウスは解除され全身状態改善し, 機械的前処置の後, 2群郭清ハルトマン法を施行した. 根治度はAであった. 術後経過は良好で, リハビリ, 心機能精査の後, 術後37日目に退院となった.