抄録
当院にて劇症肝不全症例に対する生体肝移植までの治療戦略を, 劇症肝不全の診断で集中治療を行った12例を対象に, 各症例の移植適応基準判定, 脳症の程度, 肝萎縮, 転帰について検討した。年齢は平均33.0歳 (0~62歳), 男女比5: 7であった。原疾患はB型肝炎4例, 不明8例, また亜急性4例, 急性8例で, 治療開始時脳症II度8例, III度以上が4例であった。PT時間10%以下は4例で, 治療開始時, 移植適応基準を満たしていた症例は8例で, 肝補助療法の再評価にて適応基準を満たしていた症例9例のうち4例は生体肝移植を行い, 2例は救命されたが, 2例は失った。また, 5例は移植されずに失った。全症例の救命率は41.7%であり, 内科的治療のみでは28%, 移植症例は50%であった。肝炎が重症化した場合, 劇症化の防止とともに移植までのbridge useとしての肝補助療法の適切な実施とともに, 移植のタイミングを逸しないことが肝要である。