抄録
食道癌手術の術後管理におけるエラスターゼ阻害剤投与の有用性について検討した. 胸部食道癌根治切除術施行31例 (ステロイド投与群 (S群): 11例・ステロイド・エラスターゼ阻害剤併用群 (SE群): 11例・非投与群 (N群): 9例) を対象とし, 術後血中Interleukin-6 (IL-6) ・エラスタービ・CRPの変動や, 呼吸機能障害 (P/F比) の程度について検討した. 3群間の背景因子や手術時間・出血量には差がなかった. IL-6・エラスターゼおよびCRPはN群がほかの2群に比べ高値で推移したが, 白血球数・AST・ALTの変動には差がなかった. P/F比の変動をみると, 術1日後より術5日後までSE群のみが高値で推移し, N群とS群間には差がなかった. 食道癌手術における術前ステロイド投与はサイトカインやエラスターゼの制御には有用であるが, 呼吸機能障害の抑制にはエラスターゼ阻害剤の併用が有用である.