2006 年 26 巻 5 号 p. 649-653
症例は69歳, 女性. 食欲不振と腹部膨満, 腹痛を主訴に来院した. 腹部単純レントゲン写真上腸管が著明に拡張しておりイレウス像を呈していた. また腹部CTスキャンにおいて直腸に5cm大の腫瘤を認め, 直腸癌によるイレウスと診断し人工肛門造設術を施行した. 来院時より腰部に滲出を伴う4cm大の腫瘤を認めており, 生検の結果腺癌の転移と診断された. 以上から腰転移を伴う進行直腸癌と診断し, 臍部腫瘤に対して腫瘤摘出術を行った. 内臓悪性腫瘍の皮膚転移は比較的まれであり, 一般に癌の終末期に認められる徴候である. とくに臍転移はSister Mary Joseph's noduleとして知られている. 今回われわれは直腸癌によるその1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.