日本腹部救急医学会雑誌
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軽微な症状しか示さなかったO157感染性腸炎の1例
中原 龍一犬飼 道雄内藤 稔村上 正和伊野 英男宗淳 一梶谷 伸顕氏家 良人
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2006 年 26 巻 7 号 p. 893-896

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抄録

ベロ毒素を産生するO157感染性腸炎は極めて重篤な転帰をとることがある。われわれは頻回の下痢や血便がなく, 腹部超音波検査でtarget sign様の像をきたしていたため, 診断に苦慮したO157感染性腸炎の1例を経験した。症例は20歳男性。腹痛と軟便を主訴に来院した。FOMと整腸剤を処方されたが症状が改善しないため翌日に再来院した。右下腹部に腫瘤を触知し同部位に限局性の筋性防御があり, 腹部超音波検査でtarget sign様の像があり, 腹部CT検査で上行結腸の腸管壁が著明に肥厚していた。便検査からO157表面抗原陽性, 便培養でベロ毒素 (VT1, VT2) 産生大腸菌を検出したため, O157感染性腸炎と診断した。頻回の下痢や血便などの激しい消化器症状がない場合でも, 画像検査で限局性の著明な腸管壁の肥厚像があった場合には, O157感染性腸炎を考慮した検査や治療を行う必要がある。

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