日本腹部救急医学会雑誌
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胃潰瘍穿孔に伴うバリウム腹膜炎の1例
川崎 誠一内野 隼材小笠原 敬三
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2006 年 26 巻 7 号 p. 897-900

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抄録

症例は85歳男性。2005年3月下旬に上腹部痛が出現し, 近医を受診し, 経過観察目的に入院となった。翌日腹痛が増強したため, バリウムによる上部消化管造影を施行されたところ, 穿孔性腹膜炎と診断され, 当科紹介となった。来院時腹部全体に筋性防御を認め, 腹部単純X線写真・腹部CT検査にて腹腔内にびまん性に高濃度領域を認めた。上部消化管穿孔に伴うバリウム腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した。バリウムが広範囲にわたり腹膜に付着しており, 幽門洞前壁に穿孔を認めた。可及的にバリウムを除去し腹腔内を洗浄した後, 大網充填被覆術を施行した。術後高度の炎症反応と高熱が遷延したが, 術後42日目全身状態が軽快し, 転院となった。バリウム腹膜炎は比較的まれな疾患であるが, 術中の処理に困難な面が多く, 一般の穿孔性腹膜炎に比べ強い炎症を惹起し, より重篤な経過をたどることもあるため, 消化管透視の際には注意が必要である。

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