2006 年 26 巻 7 号 p. 901-904
症例は77歳, 女性。右腰痛の精査時, 肝門部浸潤を伴う肝内胆管癌を発見され, 拡大肝左葉切除術が施行された。門脈左右分岐部に癌浸潤がみられたため, 右門脈および門脈本幹で切離後, 端端吻合により再建した。術14日後に突然の腹部違和感が出現し, 血液検査でAST, ALTの著明な上昇が認められた。腹部超音波ドプラ検査および造影CT検査において肝内門脈血流は著明に減少しており, 回結腸静脈を介した門脈造影検査上, 門脈本幹は途絶し, 肝内門脈は側副血行路によりわずかに造影されるのみであった。ウロキナーゼ24万単位を用いて血栓溶解療法を試みるも門脈本幹は開通しなかったが, 側副血行路による肝内門脈血流は改善された。このため開腹下に血栓除去術を行った。この結果, 門脈本幹の血流の明らかな改善はみられなかったものの, 術後の肝内門脈血流は良好であった。術中に留置した門脈カテーテルからヘパリン持続注入を術直後から行い, 術10日後からはワルファリン経口投与を開始した。術後肝不全に陥ったが, 術後98日目に軽快退院した。術後1年が経過した現在, 生活は自立しており, 癌の再発も認められていない。