抄録
本研究は,高等学校における総合的な探究の時間(総合探究)において,生徒の学びをいかに評価するかという問いに向き合った教師たちの,問いの変容とその探究プロセスを明らかにするものである。研究チームは,「探究学習における生徒の多様な学びとそのプロセスを,いかに評価するか」を主題とし,成果発表の形式として従来の学術論文ではなく劇作品を用いた。これは,定量的な評価では捉えきれない,生徒の多様で状況的な学びのプロセスをより豊かに表現するためである。その台本は,総合探究を担当した教師たちの実際の対話をもとに構成され,教師らが自らの経験を演じるドキュメンタリ演劇として制作された。そこには,違和感や葛藤,手応え,そして新たな問いが織り込まれている。本研究では,この台本をアートベース・リサーチの成果であると同時に,教師の問いの変容を読み解くデータとして位置づけ,分析を行った。これにより,生徒の多様な学びに向き合う教師の評価観の変容プロセスを明らかにすることを試みた。