日本教育メディア学会研究会論集
Online ISSN : 2435-0729
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  • 後藤 康志
    2026 年60 巻 p. 1-4
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    教師には「一定のAIリテラシーを身に付けること」が求められる。本稿では,UNESCO「教員のためのAI能力枠組」を手かがりに,新潟大学教職課程におけるAIリテラシーの取り組みを紹介する。 具体的には,①AI指導法×A習得:「シンキングツール授業構想支援ツール」,②専門能力開発のためのAI×A習得:学生のディープリサーチ評価活動,③人間中心のマインドセット×A習得:深層研究の使う教師はどのような力量が必要なのか,である。生成AIのその適切な活用にはAIリテラシーの習得が不可欠であり,既存の教職課程カリキュラムの中でも一部,実現可能であることがわかった。
  • 山本 千帆, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 5-13
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,科学メディアリテラシーの教材や指導法の開発の基盤として活用可能な科学メディアリテラシーにおける批判的思考態度尺度の開発を行い,その信頼性を検討することを目的とした。山本・佐藤(2026)で開発された質問項目を用い,中学校第1学年生徒138名を対象に質問紙調査を実施し,質問項目の信頼性の検討を行った。項目の分析による検討として基本統計量の分析,I-T相関分析,G-P分析を行い,内的整合性の確認としてクロンバックα係数を算出した。その結果,本尺度はクロンバックα係数が.721であり,尺度として許容される基準を上回っていたことから,尺度全体として内的整合性は有していると考えられる。また,G-P分析の結果,全24項目中23項目という高い割合で高群と低群の間に有意な差が認められた。これは,本尺度が高い弁別力を備えていることを示しており,測定ツールとして基礎的な信頼性が十分に認められると考えられる。
  • ビブリオバトルを例にして
    一番合戦 小羊子, 常川 真央, 小野 永貴
    2026 年60 巻 p. 14-19
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本の紹介を中心としたコミュニケーションゲームであるビブリオバトルは,現在全国の様々な施設や学校の中で行われている。ビブリオバトルは一方的な発表だけではなく,質疑応答の時間が設けてられている。本研究では,ビブリオバトルの質疑応答の時間に注目し,質疑応答が聴衆に与える影響について調査した。研究方法としては,大学生を対象とするビブリオバトルの実験を行った。実験では,質疑応答の効果を分かりやすくするため,発表と質疑応答の順番に一部変更を施した。結果として,実験に参加した17名のうち6名が質疑応答前後で順位変動せず,11名は順位変動が起こった。実験日ごとにグループ分けを行うと,グループごとに順位変動が起こりやすいグループと順位変動が起こりにくいグループがあることが示された。
  • 安全教育の3領域と教材に関する5つの観点からの分析
    今村 和花奈, 柳田 岳洋, 齊藤 陽花, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 20-29
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校における安全教育の授業実践に関する先行研究を,「安全教育の3領域(生活安全,交通安全,災害安全)」および「教材に関する5つの観点(教材の対象者,教科・科目,主となる教材の目標,対象とする減災対応の時期区分,使用された教授メディア)」に整理し,傾向を分析することにより,これまでの成果を把握し,今後の実践課題を考察することを目的とした。28件の授業実践を整理した結果,特に,「生活安全」「小学校低学年」「教科」「参加・協力・貢献」をテーマや対象とした授業実践の割合が低かった。このことから,①「生活安全」をテーマとした授業実践を蓄積すること,②小学校低学年を対象とした授業実践を行うこと,③教科の特性を生かした授業や,教科等横断的な視点から行う安全教育の授業実践を蓄積すること,④すべての領域において他者や地域と連携した実践を蓄積すること,が今後の主な実践課題であることが示唆された。
  • 青木 留理
    2026 年60 巻 p. 30-39
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,Canvaの共同編集機能を用いた図画工作科のアイディアスケッチ制作に着目し,試行錯誤と対話の観点から授業の実態と課題を探索的に明らかにすることを目的とした。公立小学校5年生2クラスを対象に,児童アンケートおよび担当教員,ベテラン指導教員,教科書会社社員へのインタビューを実施した。その結果,多くの児童は共同編集による相談や描き直しを肯定的に捉え,視覚的共有や修正の容易さが対話や試行錯誤を支えていることが示された。一方で,意図せぬ消去や操作ミス,他者の反応が見えにくいといった側面が,表現の受容や創造的熱中を阻害する可能性も確認された。これらの結果から,ICTを図画工作科において「道具」として位置付けるだけでは不十分であり,ICT固有の特性が学習環境や関係性に及ぼす影響を踏まえた活用の再検討が必要であることが示唆された。
  • 米国有力大学の実践事例を中心に
    加藤 由香里
    2026 年60 巻 p. 40-47
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    東京科学大学では,科学技術分野における未来の大学教員育成を目的とした Preparing Future Faculty(PFF)プログラムの実態を把握するため,米国の著名な研究大学であるハーバード大学とダートマス大学の教授学習センターを訪問した。ハーバード大学では,大学院生向けの教授方法クラス,ならびにセミナーを担当する関係者と面談し,意見交換を行う機会を得た。ダートマス大学では,主に科学技術(STEM)教育の教授方法クラスを見学し,担当教員からカリキュラム等について説明を受けた。その結果,以下の3点が明らかになった。(1)TA研修の内容,ならびにカリキュラムは部局ごとに異なり,また,その運営は一部の教員が単独,または少人数で担っている場合が多いこと,(2)PFFを含むTA向けの研修は,大学院生のキャリア形成を支援する講座として位置付けられており,複数の教育支援組織が連携して運営していること,(3)専門分野に根ざした教育能力の向上は,大学院生が教育教員として採用される可能性を高めると考えられていることが明らかになった。
  • 酒井 美佐緒, 山本 朋弘, 野口 太輔, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 48-56
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    学校管理職を対象に,生成AIの活用頻度が有効感や導入意欲に与える影響を分析した。F市の小学校管理職55名を対象とした調査の結果,校務改善への有効感等において活用頻度(高・低)による有意な差が認められた。共起ネットワーク分析からは,低頻度群の活用が通知文作成等の定型業務に留まるのに対し,高頻度群ではNotebook LMを用いた資料分析や,授業での思考ツールなど,より高度かつ具体的な活用場面を想定している実態が明らかになった。管理職が日常的に試行錯誤しながら生成AIを活用し,具体的な活用場面(資料分析や思考ツール等)を想起できるようになることは,組織内でのICT活用に関する共通理解を深め,学校全体で新たな技術を取り入れるための受容的な環境を整える契機となることが示唆された。
  • 花手 裕, 平石 雄大, 津田 奈々, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 57-65
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,発想の支援及び文章推敲を目的とした中学生が,生成AIを活用する際に入力するプロンプトを構成する要素の実態を調査することを目的とした。公立A中学校第2,3学年217名を対象に,発想の支援及び文章推敲を目的とした調査課題を実施し,その際に入力された生成AIのプロンプトを9つの要素に分類した。また,学校内(授業以外)及び学校外における生成AIの利活用頻度の高群と低群において,プロンプトに含まれる要素を比較した。その結果,発想の支援及び文章推敲のいずれの調査課題においても,一度のプロンプトに含まれる要素は2個または3個に絞られている傾向が示唆された。また,【指示の具体化】や【状況の文脈化】は高群と低群のどちらにおいても用いられていた。そして,生成AIの利活用頻度の低い生徒は,調査課題の問題文をそのまま入力する傾向が示唆された。
  • 髙田 昌裕, 竹内 俊彦
    2026 年60 巻 p. 66-75
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,失敗と再設計のプロセスを授業構造に組み込んだ生成AI動画制作ゲームの教育的効果を検証することを目的とした。大学の映像系ゼミに所属する学生17名を対象に,動画生成AIを用いた12秒CM制作ゲームを実践した。学生は4~5人で1チームとなり,まず個別にプロンプトを作成して1回目の動画生成を行い,続いて生成結果を基にチーム内で話し合い,再設計したプロンプトによる2回目の動画生成に取り組んだ。事前・事後アンケートの分析では,「生成AI動画制作は楽しいと思う」などの項目において有意な得点上昇が確認された。また,自由記述およびプロンプトの質的分析から,1回目では断片的な場面記述が中心であったプロンプトが,2回目では物語性を備えたプロンプトへと変化していることが確認された。一方,事前・事後テストにおける基礎知識の得点差は有意ではなく,本実践は,知識の獲得よりも,態度および設計的思考の側面に主な教育的効果を有していたことが示唆された。
  • 田中 浩貴, 柴田 隆史
    2026 年60 巻 p. 76-84
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,学校におけるデジタル機器利用の拡大に伴い重要性が高まっている視覚疲労や近視予防の課題に着目し,MR(Mixed Reality)ヘッドセットを用いて実空間における視距離を測定する手法を提案する。視覚疲労や近視の原因として学習時の短い視距離が指摘されるが,教室において視距離を客観的に把握することは容易ではない。提案手法では,MRヘッドセットの空間認識機能を用いて実空間内の2点間の距離を算出することで,視距離測定を可能にする。開発後には,本手法の有効性を検証するために,実距離との比較による距離測定の精度の確認と,情報端末の画面に対する測定距離及び測定角度の影響について検証した。これらの結果から,本手法に適した視距離の測定条件が明らかになり,教室環境を想定した条件下において,視距離把握の手法として有効であることが示唆された。
  • 橋谷 俊, 貫井 真史, 島津 理人, 安藤 祐介, 井手 絢絵, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 85-94
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,全国の学校現場で今後,児童生徒が生成AIの適切な使い方をどのように学ぶのか模索することを目的として,全国の小・中学校の教員7名が,学習用生成AIでの実際のプロンプト約55万件のビッグデータ分析を参考に,学校放送番組を利用しながら生成AIの適切な使い方を学ぶ授業実践を行った。その結果,児童生徒が生成AIの正しい使い方を体系的に理解するためには,生成AIの回答には誤りや偏りが含まれる場合があること等,生成AIの特性を初期段階で丁寧に指導することが必要である旨が示唆された。また,生成AIの仕組み,他者の著作権,ネット検索との差異等を理解しつつ,生成AIを学習上の選択肢として使い分ける判断力の獲得に向けて,学ぶべき要素を網羅する新たな番組開発への示唆も得られた。
  • 手塚 和佳奈, 島津 理人, 貫井 真史, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 95-100
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校第3学年における生成AI導入初期の情報活用能力に関する指導が児童の学業的援助要請に与える影響を検討することを目的とした。生成AIの導入初期段階において,使い方のみ指導した統制群と,生成AIに関わる情報活用能力の育成を目指した学習指導を行った実験群とで,生成AIを活用して紹介文を作成する学習を行った。その後,学業的援助要請尺度を用いた意識調査と,生成AIの活用方法についての振り返りを行い,両群を比較した。その結果,実験群の方が「適応的援助要請(自分で問題を解決することを意図してヒントを求める)」の意識に関する平均点が有意に高く,体裁の確認や紹介文のブラッシュアップのために生成AIを活用していたことが示された。一方,統制群は「依存的援助要請(あまり努力せずに直接的な答えを求める)」の意識に関する平均点が有意傾向にあり,生成AIに内容を考えてもらう活用が見られた。
  • 遠藤 みなみ, 佐藤 和紀, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 101-108
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,中学生の文学的作品の探究的な学びに対する態度と情報活用のスキルに関する自信との関連を探索的に検討した。公立中学校1校の第3学年生徒123名を対象に,文学的作品を探究的に学ぶ態度および情報活用のスキルに関する自信(情報の収集,整理・分析,まとめ・表現の3カテゴリ)に関する質問紙調査を実施した。その結果,文学的作品の探究的な学びに対する態度は,「整理・分析」および「まとめ・表現」と中程度の正の相関を示した。一方,「情報の収集」とも正の相関が認められたが,相対的に弱い傾向であった。これらの結果から,文学的作品の探究的な学びに対する態度は,情報を収集することに対する自信よりも,情報を整理・分析し,解釈としてまとめていくことに対する自信と関連している可能性が示唆された。
  • 吉野 友理, 三笠 佑野, 御手洗 明佳, 小野 永貴
    2026 年60 巻 p. 109-113
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,学校図書館における探究学習の成果物の保存および活用の実態を明らかにすることを目的とし,先進的な実践を行う国立・公立・私立学校の学校図書館を対象にインタビュー調査を行った。調査の結果,各校では設置形態や教育体制,人的・物的条件の違いを背景としながらも,成果物の保存形態,運用・管理体制,授業や閲覧を通じた活用が行われていることが確認された。さらに,調査結果をカテゴリ化し横断的に分析したことで,探究学習の成果物の保存・活用を成立させるためには,①探究学習が継続的に実施され学校図書館が関与する体制,②保存に適した成果物の形態や選別の仕組み,③学校図書館内における継続的な運用・管理体制,④生徒や教員に届く活用導線,⑤保存・活用の効果が校内で共有される仕組みが重要であること整理された。本研究は,複数の先進事例をもとに指針を示したことに意義がある。
  • 小松﨑 晴菜, 八木澤 史子
    2026 年60 巻 p. 114-121
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,教員養成課程の学生を対象として,模擬授業の準備で困難に直面した際の情報探索に着目し,書籍,検索エンジン,生成AI,AI要約への利用意向およびその理由を調査した。その結果,書籍の【情報の正確性と信頼性の担保】やAI要約の【概要の把握と詳細情報への足掛かり】のように,各々の特性を活かして手段を道具的に活用する記述が見られた一方で,検索エンジンの【情報探索や取捨選択への負担感】から情報を選択することを手間であると感じることや,生成AIの【回答の即時性と心理的負担の軽減】から,真偽を確かめることなく直接的に回答を求めるような依存的援助要請につながる利用を示唆する記述も見られた。このことから,同一の情報探索の手段であっても,学習を深めるためにそれらの手段を道具的に活用したり,情報を探索することの負担や真偽の確認にかかる労力を回避したりしようとするなど,学習者がどのように活用するかによって,援助要請の質に差異が生じる可能性が示唆された。
  • 丸山 雅貴
    2026 年60 巻 p. 122-129
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,義務教育段階のICT教育実践事例における「ICT活用の背景と目的・ねらい」の記述を対象に,計量テキスト分析を用いてその特徴を検討した。ICT教育活用実践事例集からテキスト型データを抽出し,コーパスを作成した上で,共起ネットワークによる可視化を実施した結果,児童生徒が主体的に考える授業実践が中核にあることや,生成AIの活用が新たな主題として浮上していることが明らかとなった。また,学年区分を用いた対応分析の結果,低学年では感性の拡張や他者との共有,中学年では教科の専門性深化や個別最適な学び,高学年では社会課題の解決や探究的な学びへと,発達段階に応じて目的・ねらいが変容していることが確認された。こうした結果から,児童生徒の発達段階に応じたICT活用の目的の変容と深化のプロセスが可視化され,ICT活用が操作習得の段階を超え,新しい学びを創造するフェーズにあることが示唆された。
  • 西尾 典洋, 杉山 岳弘
    2026 年60 巻 p. 130-135
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    映像制作初学者の作品改善において,指摘を具体的な修正行動と知識定着へ接続することは容易ではない。本研究では,時間情報(タイムコード)付きコメントと,その指摘内容に対応する教材への直接リンクを実装したレビューシステムを用い,大学の演習にて実践した。有効回答56名の分析結果,学習者は「基礎運用層」「意図統合層」「仕上げ最適化層」の3群に抽出された。アンケートの結果,コメントの参照度は全群で高いものの,教材の参照頻度と明瞭性評価には群間差(特に基礎運用層の低迷)が確認された。また自由記述から,各層が抱える困難の質的相違が明らかとなった。結論として,層ごとにフィードバックの優先度と教材の粒度(要点・比較例・詳細)を変化させる「層別支援」を提案する。本研究は,個別のつまずきに応じた導線を設計することで,初学者の自律的な作品改善を支える指導法の構築を目指すものである。
  • 松田 岳士, 近藤 伸彦, 岡田 有司, 渡辺 雄貴, 重田 勝介, 加藤 浩
    2026 年60 巻 p. 136-139
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本発表では,学習者が自分自身のすべての学習予定や学習状況を記録できるシステムSTEPSの効果や有効な活用法を模索する研究として,2024年に実施された大学生による2回目の実証評価の結果を報告する。具体的にはSTEPSの使用ログや事前のアンケートの結果を用いて,STEPSを学習計画システムとして用いた学生と学習記録システムとして用いた学生の相違点を検討する。実際に13週間STEPSを試用した学生の入力内容のうち,「学習予定」の数が「新規(予定にない学習記録のこと)」の2倍以上であった者を「予定中心グループ」,反対に「新規」の数が「学習予定」の2倍以上であった者を「記録中心グループ」と分類し,それ以外の参加者を「両方均等グループ」としてカテゴライズした。次に,これらグループ別に参加動機や,SDLレディネスとの関係を確認したところ,それぞれのグループに異なる参加動機とSDLレディネスからの影響がみとめられた。
  • 曽根原 加果, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 140-146
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    小学校第6学年外国語科における児童の振り返りに対する目的意識の変化と,目的意識の違いによる振り返り記述の傾向を整理した。目的意識の調査はオンラインを用いて,単元前・単元中・単元後の3回実施した。調査期間中に全10時間の授業を行い,毎回15分程度の振り返りの時間を設けた。振り返りを記述するシートはクラウド上で共有し,児童同士が参照,コメントできる環境を設定した。振り返り記述を意味内容に基づきコード化し,目的意識ごとの記述の傾向を分析した。その結果,目的意識の変化としては,単元前に【目的意識の欠如】に該当した児童は,単元後に【学習改善・成長への志向】や【学びの現状把握】へと移行する傾向が見られた。目的意識の違いによる記述では,【学習改善・成長への志向】に該当した児童は具体的な目標や学習状況の把握などに言及し,【目的意識の欠如】に該当した児童は活動の説明や形式的な表現が中心となる傾向が見られた。
  • 高等学校における協働的な学びから
    馬宮 悠衣, 田中 浩貴, ドゥラゴ 英理花, 柴田 隆史
    2026 年60 巻 p. 147-156
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,立体視による奥行き表現やインタラクティブな操作といったバーチャルリアリティ(VR)の特性を学習者が理解し,それらを活用した題材を考案してコンテンツを制作する授業実践を行った。対象は高校1, 2年生で,全12時限の授業を実施した。最初にVRの特性及び利点に関する学習を行い,続いて,VRコンテンツ制作に関わる技術的な演習を実施した。その後,VRの特性を活かすためのアイデアを議論して,ノートパソコン型VRシステムで動作するコンテンツを制作した。生徒はグループに分かれて協働的に取り組み,最終的にプレゼンテーションと相互評価を実施した。その結果,現実空間では実現が困難な事象をVR空間で表現する試みや,通常は二次元の論理的戦略ゲームを三次元へ拡張する試み,応急処置に関わるトレーニングを簡易に実現する試みが提案され,学習者がVRのメディア特性を主体的に活用できる可能性が示唆された。
  • 渡邉 一希, 八木澤 史子
    2026 年60 巻 p. 157-164
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では1人1台端末を活用した授業を行う教師の「学びに向かう力・人間性等」に対する具体的な支援の内容と,その背後にある教師の意識を明らかにすることを目的とした。校種や学級形態の異なる教員4名へ「学びに向かう力・人間性等」の育成に関する意識について半構造化インタビューを実施した。その結果,計20のカテゴリーが作成された。教師の意識は(1)対象者全員に共通する事項,(2)学年の発達段階による差異,(3)学級形態(通常・特別支援)による差異,(4)教師個人の教育観による差異の4つの側面に分類された。「学びに向かう力・人間性等」を育む教師の支援と意識としては,1)ICTという新たな環境を最大限に生かし,他者との対話や協働の場を拡張・保障する環境の設定を行うこと,2)足場かけと足場外しを柔軟に調整するという意識を持つこと,3)教師の持つ教育観を基盤として,各要素を統合して育むことが重要となることが示唆された。
  • 齊藤 陽花, 伊藤 真紀, 今村 和花奈, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 165-173
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,児童が学習形態を選択する場面において,ペアやグループの解散を促す教師の発話の特徴と児童の行動との関連を検討した。その結果,対象教師は,固定化されたペアやグループで学習を続けている児童に対し,学習の捗りの具合や現状の学習形態の妥当性を尋ねる発話を行っており,ペアやグループの解散を促す発話のうち約7割を占めていた。また,教師の発話によって児童の行動が即時的に変容したのは,【協働の解散の指示】【協働相手の選択に対する支援】【協働相手の提案】といった発話であった。一方,【学習状況の確認】など,ペアやグループの解散といった行動の変容に至らなかった発話は,児童が自身の学習形態を再考する機会となっていることが考えられた。以上より,教師は発話を通して,ペアやグループの解散という行動の変容を促すとともに,学習をともに行う相手の妥当性を再考するという内省を支援していることが示唆された。
  • 渡邉 光浩, 園田 文, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 174-177
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校における漢字および計算の学習に着目し,ドリル教材の採択状況と,GIGAスクール構想以降の教材変更の有無について明らかにすることを目的とした。小学校教員を対象にオンライン質問紙調査を実施し,本稿では,ドリル教材の採択について「一つの学年の教材採択に関わる立場(担任等)」と回答した230名を対象として分析した。その結果,漢字・計算のいずれにおいても教材会社のドリルが多く採択されている一方で,教材会社の「ドリル」「スキル」以外の教材を用いて指導を行っている担任等が一定数存在することが明らかとなった。ドリル教材の型については,漢字では繰り返し型と書き込み式がほぼ同程度であったのに対し,計算では書き込み式やドリル以外の教材を選択する割合が相対的に高かった。また,2020年以降に教材を変更した担任等は,漢字で25.2%,計算で23.0%であり,基礎的・基本的な知識及び技能の定着を図る学習においても,教材の在り方を見直す動きが一定程度存在することが確認された。
  • 1980~90年代の小学校向け音楽番組『ふえはうたう』(小学校3年生),『ゆかいなコンサート』(小学校4年生)から
    宇治橋 祐之, 佐藤 慶治
    2026 年60 巻 p. 178-182
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿は,NHKアーカイブス学術利用(連携型)を活用し,学校放送音楽番組が子ども向け楽曲の普及に果たした役割と,その研究方法を検討したものである。1980~90年代の小学校中学年向け番組『ふえはうたう』と『ゆかいなコンサート』を対象に,学習指導要領改訂前後の計79本を視聴し,楽曲と演出を分析した。その結果,『ふえはうたう』では『みんなのうた』などNHK番組を起点とする楽曲の学校教育への波及が確認され,『ゆかいなコンサート』では教科書では扱いにくかった非西洋系楽曲を含む鑑賞教育への貢献が明らかになった。両番組とも学年の発達段階に即した演出がなされており,アーカイブスを用いた共同研究の有効性と今後の課題が示された。
  • 井上 美空, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 183-192
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,教育メディアとしての人形劇に関する研究の動向分析と,人形劇が子どもの非認知能力の発達や学びにおいて,どのような教育的な効果を有するのかを検討するための基礎的な知見を得ることを目的とした。そのために,J-STAGE上で,タイトルに「人形劇」が含まれている査読付き論文20件を対象とし,人形劇の種類,発行年,研究領域の特徴,記述に見られる非認知能力の要素で分析した。その結果,人形劇に関する研究は2010年代以降,量的に拡大し,研究領域も多様化してきた一方で,理論的な視点が分散しており,研究全体を俯瞰的に整理する枠組みが十分ではない状況にあることが示唆された。また,先行研究においては「非認知能力」との関連が示唆される記述は見られるものの,それを主題として体系的に検討した研究は確認されなかった。
  • 浦田 航介, 勝間田 武治, 塩尻 亜希
    2026 年60 巻 p. 193-201
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    研究成果の社会還元が求められる中,専門性の高い学術論文を非専門者に届ける手法が課題となっている。本研究は,論文をマンガ形式で提示することが読者の興味および理解に与える影響を明らかにするとともに,どのようなマンガ表現要素が効果に寄与するかを検討することを目的とする。同一内容の論文をテキスト形式とマンガ形式で提示し,脳波測定とアンケートを用いて比較実験を行った。その結果,マンガ形式は読者にとって身近な内容において興味喚起に有効であり,理解促進においても一定の効果が確認された。加えて,手塚治虫,石ノ森章太郎,藤子・F・不二雄のマンガ論を参照した定性分析により,視覚的表現が読みやすさや興味の喚起に寄与することが示唆された。一方で,学術的厳密性とマンガ表現の両立には,表情やコマ割りなどの表現設計が課題として残った。今後は生成AIを活用した制作効率の向上と表現の質の両立を目指す必要がある。
  • 中学年児童を対象に
    佐藤 和紀, 手塚 和佳奈, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 202-208
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,生成AI等の普及に伴い深刻化する偽情報問題に対し,その読解と副作用である「スピルオーバー効果(懐疑心の波及効果)」の抑制を両立するメディア・リテラシー育成プログラムを開発・評価した。小学校中学年を対象に,偽情報の読解学習のみを行う統制群と,情報の信頼性を調整し副作用を抑制する学習を行った実験群を設定し,授業実践を行った。学習効果の測定には,【T:特性理解とコンテクストの理解】【S:批判的思考技能】【A:信頼の調整と批判的思考態度】の3要素からなる質問紙を用いた。分析の結果,知識や技能の定着は両群に見られたが,信頼の調整や批判的思考態度については実験群のみに有意な向上が認められた。特に,情報を鵜呑みにせず立ち止まって考える態度や具体的な検証行動において実験群の優位性が示された。以上より,本プログラムは過度な懐疑心を防ぎつつ,適切な批判的思考態度を育成する上で有効であることが示唆された。
  • 水野 一成, 近藤 勢津子
    2026 年60 巻 p. 209-212
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    小中学生においてスマートフォンの所有開始年齢は低年齢化しており,不適切利用や長時間利用に伴うリスクが指摘されている。これらのリスク低減の方法として,ペアレンタル・コントロールの設定が挙げられる。また,小中学生期は精神的自立が育まれる時期でもあり,スマホ利用においても自ら判断する力が求められる。本稿では,スマホのペアレンタル・コントロールの設定有無と精神的自立の高低を組み合わせ,各群の特性を明らかにすることを目的とした。 分析の結果,対象者は次の4群に分類された。1群:精神的自立が高く設定あり(33.4%),2群:精神的自立が低く設定あり(36.4%),3群:精神的自立が高く未設定(14.5%),4群:精神的自立が低く未設定(15.6%)であった。各群を比較したところ,1群と3群はいずれも精神的自立が高いものの,スマホ利用時間や情報活用実践力に差異が見られるなど,群によって特徴が異なることが明らかになった。
  • 小池 翔太, 島津 理人, 貫井 真史, 安藤 祐介
    2026 年60 巻 p. 213-222
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校低学年道徳科において,子供向け哲学番組と学習用生成AIを活用した「友情,信頼」の授業開発を試み,児童が生成AIとの関係性をどのように考えるかを分析した。2年生1学級を対象に授業実践ならびに授業中の対話ログと授業後の質問調査を分析した結果,児童は生成AIを人間に近い存在として捉えつつ,体の有無などの違いを意識して関係性を再評価していた。質問調査では,授業中と比較して「AIは友達だと思う」の肯定的回答が減少し,否定的回答が増加した。さらに,肯定群はAIを対話相手として受け入れる傾向が,否定群は道具的に利用する傾向が見られ,言語モデルの選択にも違いがあった。生成AIの利用意向は学習目的が中心であり,人間の友達に求めるコミュニケーションの要素は,ほとんど反映されなかった。これらの結果から,低学年でも生成AIを題材にした道徳的課題を扱うことが可能であり,児童が生成AIとの関係性を多面的に考える機会を提供できることが示唆された。
  • 中尾 教子, 八木澤 史子, 堀田 龍也
    2026 年60 巻 p. 223-227
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,小中学校教師による児童生徒への教科書の使い方の指導の実態を把握するため,小中学校教師を対象に質問調査を実施した。その結果,指導の実施状況としては,QRコードの使い方が最も頻繁に行われており,1人1台の情報端末環境に対応した指導が行われている実態が示された。一方,教師は「教科の内容に応じた活用」や「学習者に応じた活用」の指導,「子供自身が自律的に教科書を活用するという自分自身の授業観」に対して困難感・不安感を抱えていた。指導に関する学習機会については,校内の同僚や研修よりも,公的な勉強会や個人で参加する外部のセミナーといった校外のソースを重視する傾向が示された。また,これらの結果に教職経験年数による違いはみられず,指導をあまり行っていない教師ほど,学習者に応じた活用や授業設計に課題意識を持つことが確認された。なお,本研究は標本数が小さいため,統計的推測には限界がある点に留意が必要である。
  • 学力層に応じた自立した学習者育成モデルの試行
    福永 徹
    2026 年60 巻 p. 228-235
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,GIGAスクール構想下で蓄積される教育データを児童の学びに還元するため,学力層に着目した教育データ利活用モデルの構築と試行を目的とした。中核市の公立小学校の1年生および4年生を対象に,タブレットドリルの定量的な学習ログと授業支援ソフトの定性的な思考過程データを統合し,児童の習熟度に応じた支援を試みた。低学年では「端末版スタートカリキュラム」により操作障壁を解消し,リアルタイムなデータ確認による教師の「精密な見取り」と即時介入を実現した。中学年では「黒板貯金」やAI分析機能を活用し,自己調整学習を促進した。実践の結果,挙手や発表が苦手な児童の「埋もれた声」の可視化や,動画解析を通じた高度な協働学習が見られるなど,データ活用が教師の見取りを精緻化し,多人数学級における個別最適な支援と自立した学習者へと導く可能性が示唆された
  • 北原 郁美, 山本 朋弘
    2026 年60 巻 p. 236-242
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校・中学校における3Dプリンタを活用した授業実践の動向を明らかにするために,Web 上で公開されている学習指導案や研究論文を収集・整理し,誰がどの教科で,どのように活用しているのか分析した。その結果,中学校での授業実践が小学校の3倍であった。使用者では,小学校・中学校ともに,児童生徒が3Dプリンタのアプリケーションを使用して作成して,教師が3Dプリンタを使用して完成させる授業が多くみられた。教科等では,小学校では総合的な学習の時間や図画工作,中学校では技術・家庭,理科での実践が多く見られた。今後は,探究的な学習以外にも,図画工作の造形活動や理科での実験・観察においても,3Dプリンタの有効活用が期待される。
  • 黒川 瑞月, 八木澤 史子
    2026 年60 巻 p. 243-249
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,学級担任が児童のICT活用態度に与える影響の関連を検討することを目的とした。具体的には,4校の小学校において,教師および児童を対象に同一項目による質問紙調査を実施し,学級担任のICT活用態度および授業におけるICT機器の活用頻度と,児童のICT活用態度との関係性を検討した。あわせて2学級を対象に授業観察を行い,探究的な学習の過程に基づいて,ICT機器の活用を場面別に捉え,その実態を分析した。質問紙調査の結果,学級担任のICT活用態度や活用頻度と,児童のICT活用態度との間に明確な関連は認められなかった。授業観察からは,ICT機器の活用が「情報の収集」や「まとめ・表現」で多く見られた。以上より,児童のICT活用態度は,学級担任のICT活用態度や活用頻度といった単一の要因にのみ影響を受けるものではなく,授業でのICT機器の活用場面や活用の目的にも関連している可能性が示唆された。
  • 髙橋 伸明, 渡邉 光浩
    2026 年60 巻 p. 250-255
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学生がモバイルゲーム体験を通じて「学び」をどの程度主観的に認知しているかを明らかにすることを目的とした。小学生75名を対象に,普段遊んだことのあるモバイルゲームを1つ想起させ,ゲーム体験を学びとしてどのように受け止めているかについて,学びの主観的認知尺度(10項目,5件法)を用いて調査を行った。あわせて,ゲームプレイ頻度を「ほぼ毎日」と「ほぼ毎日以外」の2群に分類し比較した。その結果,ほぼ毎日プレイする児童は,それ以外の児童に比べ,モバイルゲーム体験を学びとして受け止める程度が有意に高かった。下位指標では,情意的側面で差が認められ,認知的側面では高い傾向がみられた一方,精神運動的側面では差は確認されなかった。以上より,モバイルゲーム体験は児童にとって一定程度学びとして意味づけられており,その主観的認知はプレイ頻度と関連する可能性が示唆された。
  • それは小説であって,研究なのか
    岸 磨貴子
    2026 年60 巻 p. 256-263
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,教育メディア研究におけるアートベース・リサーチ(Arts-Based Research:ABR)の方法的意義を,学会において生起した議論を小説という形式で再構成する実践を通して検討する。2025年度教育メディア学会で行われた「ABRの査読基準」をめぐる議論において生成された多声を研究データとし,それらを統合した一人の人物を造形し,筆者との対話として構成した《余白に立つ》を制作した。本研究の目的は,この小説という形式での再構成を通して,本研究テーマについて学会での対話を教育メディアとして再展開することにある。これは,ABRの意義を理論的に説明することにとどまらず,小説という表現形式を教育メディアとして位置づけ,実際に対話と問いをひらく研究実践を提示するものである。また,学会で生起した議論を,読者との関係のなかで再びひらき直すという点において,本研究は,研究関係そのものを公共にひらいていくパブリック・スカラシップの一つの実践でもある。
  • 山崎 克洋, 谷 和樹
    2026 年60 巻 p. 264-268
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    小学校5学年社会科の授業において,Google Slidesによる他者参照を授業に取り入れることは,児童の意欲を高め思考を深めるという仮説のもと研究を行った。その結果,他者参照によって,意欲が低かった児童の「PC を活用した学習活動への動機づけ」「社会科授業への動機づけ」「社会科学習全般への動機づけ」を高めることが示唆された。 ただし,元々意欲が高かった児童の学習意欲については,その高まりは少なかった。また,他者参照後の記述内容から,知識の深まりが見られた児童は70%になり,思考の深まりに他者参照が一定数効果のあることが示唆された。ただし,学力下位層への効果は限定的であった。
  • 織田 裕二, 堀田 雄大, 稲木 健太郎, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 269-275
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校第3学年を対象に,社会科の学習において児童が1人1台の情報端末を用いて動画を個別視聴した際に抽出したキーワードの内容の特徴を把握することを目的とした。X県公立小学校第3学年2学級66名を対象に,NHK for Schoolの社会科動画を用いて調査を行った。児童の記述をもとに,キーワードの抽出語数,教師が事前に想定したキーワードとの一致率を算出し,考察を行った。また,ワークシートへの記述した文字数および情報区分(映像・音声・字幕)との関連の分析を行った。その結果,抽出語数と一致率との間には関連が見られ,一致率の高い児童は抽出語数も多い傾向にあった。また,キーワードの多くは「映像・音声・字幕」や「音声・字幕」といった複数の情報区分に基づいており,小学校第3学年では,音声や字幕といった言語情報を基盤としながら,それらと映像情報とを結び付けて内容を理解している可能性が示唆された。
  • 齋藤 純, 清和田 順, 岡本 恭介, 稲垣 忠
    2026 年60 巻 p. 276-283
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    大規模言語モデルや生成AIの技術的発展に伴う関連サービスの社会への普及は子供たちが生きる社会に大きな変化をもたらしている。学校教育においても生成AIの活用は,社会からの要請の一つであり,多くの教育委員会が事例創出や普及に取り組んでいる。加えて,「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」において,児童生徒の学びの姿の課題として,主体的に学びに向き合うことができていない子供が増加していることが指摘されている。本研究は,SINET環境において生成AIを児童生徒が自分自身の必要に応じて活用し,主体的に学ぶ授業実践の在り方について試行したものである。
  • 伊藤 真紀, 平石 雄大, 上田 妃菜, 板垣 翔大, 柴田 隆史, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 284-291
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     本研究は,小学校第5学年の児童1名を対象に,メガネ型ウェアラブルカメラを用いて家庭での1日を通したスクリーンタイムを実測した。録画された動画映像を基に,使用機器・使用内容の実態を把握するとともに,デジタル機器の画面を見ている【画面注視時間】および,画面から目を離して画面以外を見ている【画面外注視時間】が,使用機器・使用内容によってどのように異なるかを事例的に検討することを目的とした。その結果,1)デジタル機器の使用が単一のデジタル機器・単一の内容で固定されるのではなく,活動の目的や使用内容に応じてデジタル機器が切り替えられていること,2)画面注視時間・画面外注視時間は使用機器・使用内容によって様相が異なることの2点が示唆された。このことから,学校と家庭が連携して健康面への配慮を検討する際に,デジタル機器の使用時間のみで指導を一律に行うのではなく,使用機器・使用内容に合わせて支援を検討する必要があることが示唆された。
  • 動画制作のリプレゼンテーション
    和田 正人, 高橋 敦志, 小川 真理絵
    2026 年60 巻 p. 292-301
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    教員養成系大学生が,メディア・リテラシー学習において,自分のメディア史のデジタル・ストーリーテリング動画を制作した。動画は生成AI利用動画と非利用動画の2種類とした。学生は,生成AI利用動画は非利用動画よりもリプレゼンテーションを低く認知した。生成AI利用動画のリプレゼンテーションに関連する項目の因子分析では,作り手の生成AIを利用する技術,生成AIのハルシネーション,生成AI利用動画を視聴したオーディエンスの3要因を見出した。この3要因に共分散構造分析を行い,高次因子モデルが最も良好であることを見出した。また技術とオーディエンスには強い関連があり,生成AIが改良され学習者がより使いやすくなると,そのことがオーディエンスに影響することが示唆された。生成AI利用動画がオーディエンスに共感を与える理由を明らかにすることが課題とされた。
  • 舘 秀典, 門脇 夏紀, 高田 昌裕
    2026 年60 巻 p. 302-305
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    近年,対面コミュニケーションに困難を抱える学生が増加している。オンライン学生サポートではカメラオフでの対応が増える一方,サポート側は表情が見えず適切な支援が困難となっている。本研究では,Webカメラから取得した表情や動作をもとに,学生が心理的負担のない段階を選択しながらアバターに感情表現させるシステムを提案する。予備実験として,大学生9名を対象に3つの提示方法(顔出し,アバター,カメラオフ)を比較した結果,アバターの感情表現機能に対して全回答者が「あったほうが良い」と回答し,段階的制御機能についても90%以上が肯定的評価を示した。また,話題の性質により適切な提示方法が異なることが明らかになった。本システムは,プライバシーを保護しつつ円滑なコミュニケーションを実現し,「合理的配慮」が必要な学生への有効な支援ツールとして,学生サポートの質的向上と早期退学防止への貢献が期待される。
  • 平山 靖
    2026 年60 巻 p. 306-314
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究の目的は,自治的学級経営を行う教師の学級経営観を明らかにすることである。自治的学級経営を行う教師と考えられた教師へのインタビューを行い,取得した音声データをもとにオープンコーディングを用いて分析した。そして,その結果をもとに信念,知識,技術の3層構造で信念体系に整理し,自治的学級経営ができる教師の学級経営観を捉えた。その結果,次の3点が示された。第一に,自治的学級経営を行う教師の学級経営観には学習観や生徒指導観や学級観に関する信念体系が見られたことである。第二に,自治的学級経営を行う教師の学級経営観における信念体系は他の体系内の知識や技術と相互に関係性をもっていたことである。第三に,自治的学級経営を行う教師の学級経営観の上位の信念には民主主義の実現など児童の自治を志す信念が見られたことである。
  • 後藤 宗, 手塚 和佳奈, 山崎 寛山, 島津 理人, 貫井 真史, 佐藤 和紀
    2026 年60 巻 p. 315-320
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,生成AIの仕組みについて学習を終えた小学校第4学年の児童を対象に,生成AIの利便性と限界に関する意識の変化を検討することを目的とした。これらの意識について児童が生成AIを実際に活用して考える活動として,①ゲーム的要素を含む活動,②身近な内容に具体的なプロンプトを入力する活動を実施した。これらの活動を実施する事前と事後に,生成AIの利便性と限界の意識に関する質問紙調査を4件法で実施した。回答結果をもとに,平均値,標準偏差を算出して,対応のあるt 検定で分析を行った。また,自由記述を分類したうえで割合を算出して,生成AIの活用に対する行動の意識を分析した。結果,本活動を行うことで,生成AIの利便性と限界の両面に関する意識が向上することが示唆された。さらに,生成AIの利便性や限界について,既習の生成AIの仕組みに対する理解と関連付けながら活用するといった行動の意識が向上することが示唆された。
  • 中里 彰吾, 安藤 明伸
    2026 年60 巻 p. 321-326
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    人工知能の活用が進む一方で,その中核技術であるニューラルネットワークは構造や処理過程が複雑であり,学習者にとって理解しにくいという課題がある。特に小学校段階では,AIの仕組みそのものを扱う学習機会や教材は限られている。そこで本研究では,ニューラルネットワークの判断プロセスを,コンピュータを用いずに身体的体験を通して学ぶアンプラグド・ワークショップを開発・実践した。ワークショップは,算数パズルによるネットワーク構造の理解,経路探索による重み付けの理解,実在のアヤメ分類データを用いた擬似ニューラルネットワーク体験の三段階で構成した。小学生とその保護者を対象に実施し,実践後の質問紙調査を分析した結果,「重み付け」や「中間層」といった概念を言語化する記述が見られ,ブラックボックス化されがちなAIの仕組み理解に一定の効果が確認された。一方で,導入活動と主活動の概念的なつながりには課題も示され,今後の教材改善の必要性が明らかとなった。
  • 角南 卓也, 泉谷 量平, 永田 智子
    2026 年60 巻 p. 327-330
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,小学校4年生の「振り返り」を活用して,生成AIによる道徳科所見文生成ツールの有効性を検証した。本ツールの特徴は,学習者が生成AIとの対話を通じて質的に高めた「振り返り」の記述を評価データとし,個々の学びを反映した所見文を自動生成する点にある。 生成された所見文を「個別性」「網羅性」「表現の自然さ」の3観点から検証した結果,「個別性」において高い評定が得られ,学習者の具体的な記述を反映することによって,所見文の質向上に寄与することが示唆された。一方で「網羅性」や「表現の自然さ」には課題も見られたものの,教員による編集を前提とした活用が有効と判断された。質問紙調査では,「実用性」「時間短縮」「応用可能性」のいずれも肯定的な回答が得られ,業務負担軽減に寄与する可能性が示された。
  • 児童の創造的態度の変容とAIに対する認識の推移に着目して
    長谷川 壮太, 守田 一帆, 稲垣 忠
    2026 年60 巻 p. 331-338
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    「音楽生成AI」を活用した創作活動が児童の創造的態度に与える影響を検討した。AIによる表現技能の補完が「精緻化」に与える影響と,AIに対する児童の認識の変容を分析した。結果,「精緻化」において,特に否定層が中間層へ移行するボトムアップが確認された。これはワークシートによる思考の言語化に加え,教師が生成AIで提示した「カノンのコード進行」等の意図的な足場架けが,技能的困難を抱える児童の認識に影響を与えたことを示唆する結果を得た。一方,「流暢さ」「柔軟性」「独創性」では,「音楽生成AI」の圧倒的な生成能力を前に「人間が創るべき」「AIには感情がない」といった,人間固有の創造性を再定義しようとする批判的自覚の芽生えが確認された。「音楽生成AI」は技能を補完する「支援」の側面と,表現主体としての自己を問い直す「鏡」の側面を併せ持ち,AIの出力を吟味する態度の表出と認識の変容が確認された。
  • 矢田 敦之
    2026 年60 巻 p. 339-343
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,教員養成課程の学生56名を対象に,算数教育における生成AI(以下AI)がもたらす変容と活用への意識構造を実証的に解明した。定量分析の結果,ハルシネーションへの脅威(M=3.71, SD=0.46)や自力思考喪失への不安(M=3.67, SD=0.47)が極めて高く,算数教育の根幹である論理的厳密性と試行錯誤のプロセスへの影響が懸念されている。一方,図形領域(M=3.37)や個別最適な支援(M=3.35)への期待も高く,意欲と懸念が共存するアンビバレンスな構造が確認された。推測統計では,活用意欲と「教師の役割変容の認識」に強い正の相関(r=.92, p<.01)があり,AI導入をパラダイム転換と捉える傾向が示唆された。質的分析からは,AIの誤答を「問い」に変える「誤答修正学習」の有効性が示され,教師には「情報の真偽を数学的根拠に基づき吟味させる伴走者」としての役割が求められている。
  • 長山 定正
    2026 年60 巻 p. 344-352
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,著者の勤務校(以下「本校」)において生成AIを生物授業に導入した実践研究である。通常授業および国際交流活動を通して,生成AIが学習者にどのような学習行為を可能にするかを,主として記述的に,必要に応じて量的データを参照しながら検討した。具体的には,中学生および高校生を対象に,ChatGPTを用いて既習内容に関するクイズを生徒自身が作成・共有する復習型授業を実施するとともに,ドイツからの短期来校生徒との国際交流授業において,翻訳機能を活用した協働的な対話活動を行った。 事前・事後アンケートおよび自由記述の分析を行った結果,生成AIに対する親近感の増加や学習への前向きな姿勢,対話への参加を促す効果が見られた。一方,定期試験の得点を補助的指標として確認したところ,平均点の差は小さく,教育的に解釈可能な水準の学力向上を示す明確な変化は認められなかった。以上より,生成AIは学力向上を直接的に目指すツールというよりも,学習者の活動や参加のあり方を支える媒介として活用される可能性が示唆された。
  • 川田 拓, 佐藤 靖泰
    2026 年60 巻 p. 353-356
    発行日: 2026/02/22
    公開日: 2026/03/06
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,教育データを活用したグループ構成の違いが,小学校社会科の学習に与える影響を検討することを目的とした。対象は小学校4年生で,社会科の「地域の特色と人々の暮らし」の単元において,宮城県仙台市を題材として授業を行った。グループを構成するために,児童は教師が用意した教材資料を読み,興味をもった箇所をBookRoll上でマーキングし,その教育データを分析した結果を基に,同質グループと異質グループを編成し,調べ学習・まとめ・発表を実施した。その結果,同質グループでは特定の視点を中心に内容を深く掘り下げる傾向が見られた一方,異質グループでは複数の視点を関連付け,地域の特色を多面的に捉えるまとめが多く見られた。本実践から,日常的な学習活動で得られる教育データを用いた簡便なグループ編成が,協働的学びの質を高める可能性が示唆された。
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