抄録
本研究は,教育メディア研究におけるアートベース・リサーチ(Arts-Based Research:ABR)の方法的意義を,学会において生起した議論を小説という形式で再構成する実践を通して検討する。2025年度教育メディア学会で行われた「ABRの査読基準」をめぐる議論において生成された多声を研究データとし,それらを統合した一人の人物を造形し,筆者との対話として構成した《余白に立つ》を制作した。本研究の目的は,この小説という形式での再構成を通して,本研究テーマについて学会での対話を教育メディアとして再展開することにある。これは,ABRの意義を理論的に説明することにとどまらず,小説という表現形式を教育メディアとして位置づけ,実際に対話と問いをひらく研究実践を提示するものである。また,学会で生起した議論を,読者との関係のなかで再びひらき直すという点において,本研究は,研究関係そのものを公共にひらいていくパブリック・スカラシップの一つの実践でもある。