抄録
本稿の目的は,大学院における公会計教育の実践事例として,長崎県立大学大学院地域創生研究科で筆者が実行している管理会計サイドからの教育実践例を用いて,地方公共団体(地方自治体または自治体とも称する)の職員に対する共創的・創発的な教育効果の可能性について明らかにすることである。
研究指導(公会計教育)では,大学院生各自が設定した行政機関による管理会計活用に関係する修士論文テーマに対する指導が中心となっている。指導教員のスタンスとしては,主として営利企業の経営管理に資することを目的に発展した会計学の領域である管理会計が,地方自治体現場で実行される「予算管理」「業務効率化」「行政評価」「リスクマネジメント(内部統制)」に対し,首長・部局長・管理職・業務担当者らによって自覚的に活用される仕組みの構築を提案できる修士論文の内容で完成していくことを重視している。
共創的・創発的教育では,多様性(多様な人材の集合体)を前提として,参加メンバー(研究指導教員・大学院生)の経験値・スキル・問題提起力・解決への探索力を主要な要素とし,参加メンバー間の深い議論を通じて新しい価値提案を可能にする教育展開を目指している。本稿での論究の結果,参加メンバーのもつポテンシャルから共創的・創発的な教育の効果が獲得される可能性は高いと考える。