会計教育研究
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目次
統一論題報告「アフターコロナの会計教育」
  • 竹中 徹
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_2-11_6
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    日本会計教育学会第14回全国大会統一論題報告「アフターコロナの会計教育」は,スタディ・グループ「遠隔授業時代の会計教育」(2020年度〜2021年度)の最終報告を兼ねて行われたものである。本稿では,スタディ・グループ最終報告の概要を述べる。
  • 梶原 太一
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_7-11_16
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    本稿は,遠隔授業時代の大学会計教育の担当者がどのような課題や変化に直面しているのかを解明するために,質問票調査を実施し,回答結果に見られる傾向を考察する。特に,会計教育の内容・方法・目標の変化,遠隔授業への対応と評価,遠隔授業と学習者中心の教育パラダイムの関係等を検証する。
    会計教育の内容・方法・目標に関する先行調査との比較では,遠隔以前と同様の傾向が観察され,遠隔授業時代にあっても不変の会計教育の本質の一端が示された。教授法の違いに注目すると,学習者同士の協調的な学習を志向する場合ほど,教員の感じる遠隔授業のつらさが高まり,対面授業を希求する兆候が示された。遠隔の弱点には,学生間や教員との交流の制限,教員による学生の反応や理解度の把握の困難,とする回答が多く寄せられた。遠隔でのフィードバック機能を兼ね備えた新しいテクノロジー等でこの弱みを克服できれば,遠隔授業の可能性は拡大する。
  • 村上 敏也
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_17-11_22
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    日本会計教育学会スタディ・グループ「遠隔授業時代の会計教育」(2020年度から2021年度)では,2020年9月の発足以来,遠隔授業時代となった現代における,会計教育の現状と今後を問う研究が取り組まれてきた。本研究では,遠隔授業時代の会計教育における教授法に焦点をあて,高校および大学教員へのアンケート調査をつうじて教育パラダイムの変化の兆候について探索した。
    その結果,遠隔授業の背景となる,学習観(教化主義・構成主義)が会計教育の現場において教員間で拮抗していることが確認された。一方で,会計の教育目的においては基本的に学習観の差異がみられず,また学習の目的と方法の主体性の所在についても学習観と一貫性がなく学習観の解釈について多義性がみられた。
    学習観を構成する教育パラダイムの違いについて会計教育の現場では統一した定義の合意が十分に形成されていない可能性があり,今後ますますの議論が期待される。
スタディ・グループ最終報告
  • 松本 敏史, 石田 晴美, 小林 麻理, 柴 健次, 島本 克彦, 竹中 徹, 飛田 努, 宮地 晃輔
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_23-11_27
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    2015年の総務省の文書を受けて,現在ではほとんどの地方自治体が「発生主義」に基づいて作成した「財務書類」をウエッブ上で公表している。ただし会計情報の活用には財務書類の読解力が必要である。それはすなわち「地方公会計教育」に対する需要の発生を意味する。今回,地方公会計教育をテーマとするスタディ・グループ(以下,SG)を結成した背景にはこのような認識があった。
    SGで最初に議論したテーマは入門テキストの出版である。企画は見送られたが,そこでの議論を通じて明らかになったのは,地方公会計の基礎概念や計算構造の理解,財務書類の分析視角等がメンバーによって共有されていないという点である。そのためSGでは企業会計との対比を通じて地方公会計の論点を整理し,各自分担した論点について考察を進めていくことにした。2022年の全国大会における最終報告はその成果の一部である。
  • 松本 敏史
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_28-11_35
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    総務省の方針に従い,現在ではほとんどの地方自治体が「統一的な基準」による「財務書類」をウエッブ上で公開している。それにより,いまでは誰でも地方自治体の財政状態や行政コストを分析できるようになった。ただしこのシステムを活用するためには財務書類の読解力が必要である。それはすなわち地方公会計教育に対する新たな需要の発生を意味する。であれば我々会計教育者はそれに応える必要があろう。その際,企業会計の専門家が地方公会計を学ぶメリットは大きい。なぜなら企業会計と地方公会計の対比を通じて多くの気づきを得ることができるからである。そしてここに地方公会計教育のヒントがあるように思われる。本稿では①地方公会計と減価償却の自己金融効果,②ROEのデュポン分解と地方公会計への適用可能性,③地方公会計における将来支出情報の開示について得た気づきを紹介している。地方公会計の教育方法を考えるうえで参考になれば幸いである。
  • 柴 健次
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_36-11_43
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    政府・非営利法人の会計の相違は貸借対照表に顕著に表れる。それを統一しようとする動きもあるが,筆者はそれぞれの組織目的に即した会計の特徴が純資産に現れていて,これを無理に統一する必要はないと考える。これを教授するにあたっては,一般複式簿記を想定しそこにおける純資産は資産負債差額に過ぎないと理解することから始め,次に,組織目的を満たす計算制度にするために純資産に下位勘定(構成要素)として資産を拘束する科目を設けることを理解させる。さらに資産を拘束する下位勘定を設けないのが政府会計の特徴であることを理解させる。そのような教育上の試みの目的は,さまざまな会計の相違を論理的に理解させることを目的としている。
  • ―財務書類の活用を中心に―
    石田 晴美
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_44-11_53
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    本稿では「作成」から「活用」のステージに移った地方公会計において,総務省が財務書類活用のためどのような情報を公開しているか,及び,公開情報を活用する際に留意すべき点を明らかにした。現行では国が所有するものの都道県が管理する国道や一級河川等の「所有外資産」が自治体に存在し,資産と負債がアンバランスに計上されていること,固定資産の評価基準が各自治体により異なり類似団体比較が困難なこと,臨時財政対策債等の実質的には負債といえないものが負債に計上されること,および,固定資産の実際の耐用年数と指標作成に係る耐用年数が異なること等を検証した。そのため,特に純資産比率の団体間比較は困難となっており,総務省公表指標等の利用については留意が必要であることを指摘した。
    地方公会計の最大のステークホルダーは住民である。情報を受け取る側の住民の会計リテラシーを高めることが重要である。そのために,地方公会計教育が果たすべき役割は大きい。
  • ―長崎県立大学大学院の事例から―
    宮地 晃輔
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_54-11_63
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,大学院における公会計教育の実践事例として,長崎県立大学大学院地域創生研究科で筆者が実行している管理会計サイドからの教育実践例を用いて,地方公共団体(地方自治体または自治体とも称する)の職員に対する共創的・創発的な教育効果の可能性について明らかにすることである。
    研究指導(公会計教育)では,大学院生各自が設定した行政機関による管理会計活用に関係する修士論文テーマに対する指導が中心となっている。指導教員のスタンスとしては,主として営利企業の経営管理に資することを目的に発展した会計学の領域である管理会計が,地方自治体現場で実行される「予算管理」「業務効率化」「行政評価」「リスクマネジメント(内部統制)」に対し,首長・部局長・管理職・業務担当者らによって自覚的に活用される仕組みの構築を提案できる修士論文の内容で完成していくことを重視している。
    共創的・創発的教育では,多様性(多様な人材の集合体)を前提として,参加メンバー(研究指導教員・大学院生)の経験値・スキル・問題提起力・解決への探索力を主要な要素とし,参加メンバー間の深い議論を通じて新しい価値提案を可能にする教育展開を目指している。本稿での論究の結果,参加メンバーのもつポテンシャルから共創的・創発的な教育の効果が獲得される可能性は高いと考える。
  • ―自治体職員へのインタビュー調査をもとに―
    飛田 努
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_64-11_72
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    我が国の地方自治体において「マネジメント・サイクル」という管理会計で用いられる用語が用いられている。現在の政府,地方自治体における具体的な業績管理システムとして「行政評価」がある。行政評価は計画体系を中心とした業績管理システムであるとされ,いわゆるPDCAサイクルが意識されている。これに対して自治体職員に対してインタビューを行ったところ,予算を獲得することに重きを置き過ぎるがゆえに,予算策定時に行政課題に対して措置を行うべき事象の重要性を折衝を通じて示してはいるが,執行によって得られた結果に関して十分に関心が示されていないこともあるとの見解も示されている。そこで,本稿では政府や地方自治体の職員への研修を行うに際して,行政における管理会計問題の1つとして行政評価を題材に取り扱う。これにより,自治体職員における管理会計教育のあり方を検討する材料を検討する。
教育実践研究
  • ―米国の事例を参考にして―
    山矢 和輝
    2023 年 11 巻 1 号 p. 11_73-11_81
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,BIシステムを大規模データの管理・分析・報告を行うための情報システムと位置づけ,米国におけるCPA進化モデルカリキュラムとBI教育事例を参照の上,Microsoft社のPower BIを用いた会計データ分析教育を設計・試行した。
    講義後に実施したアンケートを通じて,学生がBIシステムの各機能に肯定的な印象を形成しており,BIを用いることで大規模な会計データの分析効果が高まる可能性が示された。また事前学習・インストール環境・アプリケーション選定に関する課題を認識した。
編集後記
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