抄録
政治の人格化(personalisation)や大統領化(presidentialization)が英国をはじめ,各国で指摘されるようになっている。しかし,これらの概念の内容は多義的かつ大括りであり,そのことがかえって現実理解の妨げになる可能性がある。本稿は,こうした人格化や大統領化といった概念が英国政治の現実からいかなることを汲み取ろうとするのかを再検討し,整理し直すことを目的とする。本稿では特に大統領化論が,政府内での首相への集権化と政権党内での党首への集権化をひとつの概念のなかに封じ込めたことを問題視する。つまり,説明されるべき課題と説明材料とされるべき要因がひとつの概念の構成要素とされることで,現代政治に起きている重要な変化が捉えられなくなっているのではないかという問題を指摘する。