2012 年 28 巻 1 号 p. 135-149
本稿の目的は,日本の政治行動研究の文脈において検討されることが少なかった,政治への信頼と政治的決定の受容の関連を明らかにすることである。これまで,両者の関係は,信頼は協力行為を促すという単純なロジックのもとで説明されることが多かった。これに対して,本稿はすべての信頼がすべての政治的決定に対して,その受容を促す効果を有するわけではないこと,さらに政府への協力行為には積極的協力と消極的協力という異なる2つがあり,信頼と関連するのは後者であることを主張する。JABISS調査とJSSGLOPE調査を用いた実証分析の結果,第1に政治的決定の受容を促すのは政治的アクターへの信頼ではなく代議制民主主義を支える政治制度への信頼であること,第2に政治制度への信頼は,抵抗しないという意味での消極的な協力を促すことが明らかとなった。