2012 年 28 巻 2 号 p. 78-93
本論では,Samuels & Shugart (2010) が提起した「政党の大統領制化」がインドネシアでもみられるのか,そうでないとすればなぜなのかという点を議論する。インドネシアでは,すべての政党組織で「大統領制化」が起こっているわけではない。政党組織の大統領制化が進むかどうかは,①政党の組織化の程度と②大統領選挙での勝算の程度の2つに依存している。特定の政治家を大統領選に出馬させることを目的とする「個人政党」では,政党の指導者自身が組織全体を統括することができるため,政党組織が執政部門と立法部門に分離することはない。一方,中小規模の組織政党にとっては,大統領選は二次的な意味合いしかもたないため,組織の大統領制化は進まない。一方,地方レベルでは2005年から首長直接選挙が導入されたことで,政党の大統領制化が進む傾向が観察される。